飽き反芻

飽き反芻_痛みと愛と呪縛 | ナノ
痛みと愛と呪縛


「楽しかたか」

私達が、帰るとフェイタンは外で待っていた。そんな彼が愛らしい。心配で待っていたのだろうか。パクとマチはそれを見て笑いながら中に入って行くので、今日の礼を言って、別れた。

「うん」

私は二人にいっぱい買って貰っちゃったっと呟いて、両手の荷物を見るとフェイタンが私から荷物を取り上げて、中に歩き始めた。私は礼を言って付いていく。

「そちじゃないね」

私は朝私が寝ていた部屋に向かおうとしたがフェイタンは反対側に向かって歩いていく、あぁ、そうかっと納得してフェイタンの後を私は追いかける。こう時何時も少し静かな雰囲気が流れるんだ。

フェイタンが一つの部屋に入ったので私も一緒に入る。フェイタンは部屋の隅に私の荷物を置いて、端に置いていた椅子を真ん中に置いたので、私は何も言わずにそれに座るために歩く。何度も経験しているはずなのに慣れることもない行為にトクトクなる心臓は、喜びなのか恐怖なのか定かではない。
会話もない緊張感に何時もと違い、怒られてとか無理やりではなく自分からされる為に此処に座ったという事が私を早くする。

拘束される為に抵抗もせずフェイタンの思うままに身体を動かす事も全て彼を愛し彼を受け入れる為の行為だと思うと何だかこの行為全てが神聖なる儀式のように思える。
動けない私に触れてくるフェイタンの手は割れ物に触れるように優しくくすぐったい。

「どうして、ワタシの言う事がきけなかたね」

あぁ、フェイタンは怒っているんじゃなくて悲しんでいるのだろうかっと思った。そして、私は自覚した。私は展示会に行きたかった訳でも外に出たかった訳でもなかったのかもしれない。フェイタンがいない事が寂しくて、彼に構って欲しくて、約束を破って時間も見ずにあの場に居たのではないかっと。ただ、それは今のこの雰囲気に呑まれてそう思っているだけなのかもしれないが。

「ごめんなさい」

「何時もそればかりね、謝罪しても治らないなら意味がないよ」

全くもってその通りだけど、今の私にはそれ以外の答えが見つからない。思っている事は余りにも私がフェイタンの事を好きで仕方ないと言っているようなもので、それを伝えるにはあまりにも不確かな関係で勇気が出ない。
一掃の事、私の心もフェイタンの心もお互いに覗く事ができればっと思ってしまう。

「リノン、ワタシはお前の事を自由にする気なんてもうないね」

心をキュッと掴まれた様な気がする。まるで、呪いの言葉の様にフェイタンが私を自らの物だと言うのは、初めて聞いた時は凄く凄く嬉しくて、私の全てを支配するフェイタンに興奮したが、今は少しの痛みを孕んだ優しさが私を包み込む。動かない手と足がもどかしい、きっと手が動かせていたなら私は思わずフェイタンを抱きしめていたかもしれない。

好きで好きで仕方なくて、嫉妬するのはフェイタンだけじゃないんだよ。シャルが羨ましくて仕方なかったし、私だってフェイタンの隣にいつでも居たかった。私を置いて出ていくのは何時もフェイタンじゃないっと吐き出してしまいたい。

自分の感情を飲み込むのがこんなに辛いものだとは思わなかった。悪い事をしたのだから甘んじて受けようなんて思っていたのはきっと自分に嘘をついていたんだ。

「じゃ、もっと縛り付けておいてくれないと逃げちゃうかもしれないよ」


自分でもどうしてそんな事を言ってしまったのかわからなかった。


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