飽き反芻

飽き反芻_痛みと愛と呪縛 | ナノ
痛みと愛と呪縛


「でよぉ、乗り込むのか?」

あの後、リノンの能力を使えるようにしたフェイタンは渋々フィンクスにリノンを託してクローレのアジトが見える場所にいた。元より有名なマフィアでコソコソと隠れるような連中ではない。場所も街中にあり、人通りは多くはないが誰もいないわけでもなく、チラホラ歩く人が見える。少し離れた場所にいるがクローレのアジトは大きく、離れた場所からでもよく見える。


「手は出すな言われてるね、忘れたか」

「あ??だったらどうやって調べんだよ」

ノブナガとのコンビは今まであまり無く、ノブナガは短気な上に察しも悪い。フィンクスも同じようなものだが、あいつの場合はまだ考え無しではないので話が通じるが、ノブナガは単純な上に馬鹿だ。少し苛立つが此処で喧嘩でもすれば怪しまれるだろうとフェイタンは自分を抑える。

「1匹攫て聞けばいいね」

「めんどくせぇな」

まぁ、今回の仕事はノブナガにとっては暇な仕事だろうが、仕方ない。心底怠そうに舌打ちするノブナガは諦めたように攫ってくれば良いんだなっとクローレのアジトから出てくる男を見た。

「誰でもいい事ないね、頭の女狙うよ」

「なんだ、お前も女にハマったか」

ノブナガが言った言葉にリノン以外の女とどうこうしようなんて微塵も思ってはいない。ただ仕事の為に情報を引き出すだけだ。とフェイタンは思いながらノブナガを睨んだ。

「興味ないね」

「そんなに良いのかアイツ」

良いなんてもんじゃない。自分が自分で制御できなくなるように自分を侵食し、ただただリノンを求めてしまう。そして、それがとてつもなく心地いい。笑った顔も泣き顔もこの前初めて見た怒り狂った顔も全て愛おしいっとフェイタンは思う。ただ、リノンを自分と同じような気持ちで見る奴がいたとしたら許せない。

「リノンに手を出す考えない事よ」

「ったく、初めて女が出来たと思ったら、お熱い限りだぜ」

頭を掻いてそう言ったノブナガに言い返してやろうかとフェイタンは思ったが何も言い返せなかった。お互いに入れ込んでいることは否定できない。

「ささと終わらせて帰るね」

そう言ってフェイタンとノブナガはクローレのアジトから出てきた男性3人を連れた女を見た。シャルの情報にあった頭の女の中で一番のお気に入りの女だ。赤のスリットの入ったロングドレスを着たその女が車に乗り込むのを見た2人は、少しアジトから離れた場所で女を攫うため車を尾ける。

「もういいだろ」

強化系は何故こんなにもせっかちなのだろうと疑問に思うが、まぁ、人の気配もないし此処まで離れれば問題ないだろうとフェイタンが何も返事を返さないとノブナガは車に飛び乗り運転席と助手席の男を切った。

「キッ」

後部座席の女が叫ぶ前にフェイタンは後ろに座っていた男を1人首を切って殺し、女を手刀で気絶させた。ノブナガは簡単すぎてつまらねぇなっとボヤキながらフェイタンが気絶させた女を担ぎ上げた。

「仕方ないよ、今回は情報収集が目的ね」

フェイタンがそう言ったのを皮切りに2人はその場から離れた。早く情報を聞き出し、リノンが起きる前に帰ろうとフェイタンは急ぐ。


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