:: ▼暗転


▼暗転 時系列謎



「ねぇ、」

『…なんだ、』

「もし、私が死んだら、ブラックアウトは私を忘れない?」


返答がくるまで、普段寡黙である彼だけれども、それ以上に時間がかかった気がした。

私が彼の膝上に座り、そんな私の背後の、彼が持つ紅く切れ長な瞳の焦点が虚を突かれ一定の距離を右往左往しているのが目に浮かんでしまった。
きっと迷っている。私は独りでそう思った。


『…気になるのか、』

「うん、」

『……………、』


無数の無言のあと、彼はお前のことは忘れたくはないと、はっきりとした口調で言った。

その静寂の中の台詞に、私は大いに安堵の息をもらした。


「良かったぁ…、」

『…仮にも、の話だが、あまり俺の前では話すな……、』


首筋に顔を埋めてきながらも、ブラックアウトの気分を害したかもしれない。ごめんねと私は直ぐさま謝った。
私だって、そんな話はしたくないし、だけども別れは必ずやって来る、だからこそ私は安堵する、遥かに長寿な彼が短命な私を忘れないことを。


「人間ってね、」

『長くてせいぜい100年なんだろう…、』

「、そうじゃなくて、」

『?』

「忘れられることが、一番辛いの。」


愛した人に。

だって嫌じゃない? と何の根拠もなく言った言葉ではあったが、一理はあると信じている。

私がそう告げた途端、私の周りがだんだんと暖かくなって、更には耳元で、


『なら俺は…お前には辛い思いはさせない、』


と、ブラックアウトが囁いてふかくふかく私を抱きしめてくれるのだった。




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2013.01.27 (Sun)


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