小説 | ナノ




信用だ、信頼だ。

そんなもの、クソ食らえ。

俺は誰も信じない。
俺は誰も頼らない。

表面上では対等に扱い、裏では蔑み虐げようとする人間など。

信じない。頼らない。

俺が信じるのは、たった1人の可愛い可愛い俺の弟だけ。


俺が遥を守るから、俺は誰にも頼らない!


それなのに、嗚呼。

「初めまして、洋!俺は緒方柚樹!お前を守る相棒だ!!」

初めて俺を相棒と呼んだ、馬鹿でウザくて、でもだからこそ直向きな、そいつの言葉が。

「お前は1人じゃない。俺もいるし、緒方も助手達もいる。不満か?」

素っ気ないけれど、暖かな感情を含んだ相棒の言葉が。

「因幡さん、俺、因幡さんのこと好き。だから俺は此処にいるんだよ」

優しい表情で、声で、励ましてくれる、圭の言葉が。

「そうですよ先生。僕は圭くんの何百倍も先生のこと大好きです。だから、泣かないで下さい、先生」

いつも側にいてくれる、優太の大好きって言葉が。

「僕の世界は何時だってにーにが中心なの。大好きだよ、にーに」

遥の、心からの笑顔と、言葉が。

「精々頑張れよ、馬鹿息子。お前に逮捕されるのを期待しないで待っといてやるよ」

ムカつくけれど、そうやって前へ、前へと導こうとする聡明の言葉が。

「探偵さん。あんたが何だろうと別に構いやしないさ。俺が見てるのはあんたが誰か、じゃなくてあんたがどういう人なのか、なんだからさ」

不思議と、人を安心させる蔵見の言葉が。

「あんたさ、もうちっと自分大事にしちょれ。あんたのこと大事にしとる奴はたくさんいるきに」

飾りのない真っ直ぐな、思いやりに溢れた鉄謙の言葉が。

「俺はお前のことよく知らねぇから何とも言えないが…あんま、無理はすんなよ」

無骨で、不器用な、それでも優しく響く、大矢の言葉が。

頑なに築いてきた壁を、簡単にボロボロと崩していく。

固く硬く、築いていた筈なのに、余りにも呆気なく壊れていくそれにどうしようもない悲しみを覚えた。

でも、悲しみよりも遥かに勝る嬉しさだとか、そんな感情で胸が熱くなる。


なぁ、言ってやりたいよ。

遥や自分を守るのに一生懸命になって、堅い壁を作って、牙を剥いていた昔の俺に。


そんなに、肩肘張らなくたっていいんだ、って。

ちゃんと、分かって、側にいてくれる奴らがいるんだ、って。



ー嬉しいからだと、泣いていたー

(泣かないでって慰めてくれる助手二人に、相棒に、仲間がいるんだから)



Fin

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