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call the name 4



あの日、どうやらダイゴさんに一目惚れしてしまったらしいアリスは、両親に頼んでダイゴさんとのお見合いを取り付けた。アリスの父親が経営する会社はデボンコーポレーションに並ばなくとも劣らない規模のものなので、相手として不足はないはず。
そして、お見合いが行われる日が今日。アリスに、緊張するから付いてきて、と言われてしまっては断れるはずもないので、私も同行だ。
アリスとダイゴさんがくっつくことに関してよくよく考えてみたが、これは物凄いチャンスであるという認識に辿り着いた。二人が結婚すれば、毎日ダイゴさんを拝み放題だし、あわよくばダイゴさんつながりで、四天王とかあちこちのジムリーダーとか各地のチャンピオンとかレッドさんとかに会えるかもしれない。これはぜひとも応援して二人の仲を取り持ち、私の野望を達成しなくては!
アリスの執事さんが持つバスケットの中にて、メラメラと使命感に燃えながら、お見合いを行う料亭に向かった。

「ありがとう、さがっていいわ」

料亭についてしばらく歩いたのち、執事さんの手からアリスにバスケットが手渡された。どうやら部屋についたみたいだ。扉を開く音がして、トスっという音と共に浮遊感が消える。下に降ろされたらしい。バスケットの蓋を頭で少し持ち上げて外を見れば、そこは畳の和風の部屋だった。開け放たれた縁側の向こうには、獅子嚇しがカコーン、と音を響かせている。
そして、机を挟んだアリスの向かい側に、ダイゴさんが座っているのを確認して、バスケットの蓋を閉じた。ダイゴさんの表情化から考察するに、彼はこの縁談には乗り気でないようだ。彼ほどの人になれば、このような話なんて振って湧くほど経験済みなのだろう。だけど、アリスを好きになってもらわないと困るのだ。
人が揃ったらしく、始まった縁談を盗み聞きしながら策を練る。私の出番は、もう少し後だ。
二人の親を交えての難しい話の間は、バスケットの中でごろごろとくつろぎ、話が終わるのを待った。退屈で欠伸が出てきたころに、話はようやく終わったみたいだ。

「では、後はお若い二人で…」

はいはい、その言葉を待ってましたよっと。いくつかの大きな足音が扉の向こうに出ていくのを待ってから、バスケットの蓋を持ち上げた。出来た隙間から外へ出れば、緊張した様子のアリスと目があった。そうだよねえ、好きな人と二人きりだもんね。私もいるけど。
でもま、私がこの空気をどうにか頑張って払拭してみよう。
大丈夫だよ、とアリスに擦り寄ってから、ダイゴさんに向かって鳴き声を上げた。

「ああ、君はこの前の」

私の登場で目元を少し和らげたダイゴさんの元に行って、アリスにしたのと同じように擦り寄る。頭を撫でてくれるその手に、ごろごろと喉を鳴らしながらちゃっかりダイゴさんの膝の上に居座った。

「まあ、エネコがそんなに懐くなんて珍しいわ」

向かい側で驚いているアリスを横目に、さらにダイゴさんに擦り寄る。この行動は結構恥ずかしいものがあるが、アリスのためだ。加えて、甘えるように鳴いてやれば、ダイゴさんはさらに表情を柔らかくした。

「そうなんですか。そういえば、あの日脱走してましたけど、いつものことなんですか?」
「いいえ、今まで逃げ出したことなんて一度もないの。だから、どうして逃げたのか分からなくて…」

ぎこちないながらも、交わされだした会話に、よしよしとほくそ笑む。この調子で親密度アップだ。頑張れ、お嬢様!





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