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call the name 3



そうこうのんびりしているうちに三ヶ月が経った。なんてこと。
このまま一生を終えるのか。それは嫌だ。レッドさんに会いたいよ。というわけで、今会いに行きます!
………と、家出したのはいいのだが。

「こら、君はどこの子かな」

首根っこを捕まれて、体が宙に浮いたので足をばたつかせる。石好きの変人に、私は捕えられていた。ある意味目的達成ではあるのだが。
如何せん、こんなシチュエーションでは格好が付かない。脱走したところを同じく脱走している模様の変人に捕まるなんて(スーツでピシッとしめている割に、行動がどこかこそこそと辺りを警戒しているように見えるので、そういう推測に至った)。せめてもう少しマシな出会いは出来なかったものだろうかと思ってしまう。まあ、私の姿がエネコな時点で何かが間違っているような気がするけれど。何にせよ、とんだ大誤算だ。ダイゴさんだけに。
なぜ彼が、私を誰かのポケモンだということが分かったのかというと、私の首には青いリボンが結ばれているから。ちなみに、おしゃれな迷子札付き。アクセントに小さなダイヤモンドの粒がキラリと輝いている。迷子札ごときにダイヤモンドを付けるなんて、と初めて見た時思ったが、「気に入らない?ならこっちの物はどうかしら?」とアリスにダイヤモンドで縁取られた札を見せられたら、こっちで十分だと言わずにはいられなかった。貧乏性?何とでも言ってくれ。私は散歩に行く度、札を落とさないかと常に不安を抱きながら歩くのは嫌なんだ。
さて、ある意味目的の出会いは果たせたわけだけど、これからどうしようか。そんなことを思っていると、ぶらぶらと揺れていた体をダイゴさんにしっかり抱き上げられる。

「あ、迷子札付いてる」
「……」
「えっと、これってここから少し行った所か。よし、僕が君を家まで連れて行ってあげるよ」
「ねぇー…(いえいえお構い無く)」
「すぐにパートナーに会えるから。大丈夫だよ」

私の鳴き声を不安の意味にとったらしいダイゴさんは、どんな女性でも落ちてしまいそうなパーツの整った顔で微笑み、そう言った。わ、なんてイケメン!
至近距離で拝んだイケメンフェイスに硬直してしまっている間に、ダイゴさんは迷子札に書かれた住所を頼りに歩き始めた。
レッドさん探しに家出してみて、ホウエン地方どころかカナズミシティすら出ないうちに結局強制送還というオチだけど、不意討ちにしろダイゴさんに会えたし、今回はまあいっか。石マニアに出会えただけでよしとしよう。それだけでも十分にラッキーだったと思うもの。
それにしても、家出して10分で帰るなんて、アリスにも私が家出したと認識されないよねきっと。あまりにも規模の小さい家出だった、としみじみしながらダイゴさんの腕の中から変わりゆく景色を眺めていると、すぐに見覚えのある家が見えてきた。

「…ここかな?」
「ねぇ」

大きな門の前で止まったダイゴさんは、迷子札をもう一度見直して、送り届ける家が間違ってないか確認をする。

「この家の子かあ。通りで気品があるわけだ」

そんな馬鹿な。ダイゴさんの言葉を心の中で即否定する。庶民生まれ庶民育ちな私のどこに気品があるというのだろう。確かに今は金持ちの家の子だが、そんな環境になってまだ一年も経ってないというのに。
……おや?
私の耳は、不意に聞こえたある足音に、ぴくりと反応した。

「……エネコ!」

顔を向けると、そこには庭で花を愛でていたらしく白いワンピースに帽子を被ったアリスが、こちらに向かって駆けてきていた。門のすぐそばまで近寄ってきたアリスは、ダイゴさんの姿を認めて、きょとんと大きな瞳を瞬かせた。

「どちら様?」
「ただの通りすがりの者です。お宅の子が迷子になっていたようだったので、お届けに参りました」

そしてにっこりスマイル。
なんだ変人、家のお嬢様に手を出す気か。愛想の良すぎるダイゴさんに思わず目を細めてジト目で見る。もともと線のような目だが。
ちらりとアリスを見ると、ぼうっとダイゴさんを見つめて頬を染めている。
…あれれ?




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