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call the name 2



「今日もいい天気ね」
「ねー」

花柄の刺繍がされてある白い日傘をさして歩きながら彼女、アリスは隣を歩く私に笑いかけた。
私の主人であるアリスはいいとこのお嬢様。つまりは金持ち。親が大企業の社長らしい。仕事が忙しいようなのであまり見たことはないけれど、何回か拝見したお顔は母親も父親も美形であったと記憶している。だからこんなに可愛らしい娘が生まれたのだろう。私の家系とは大違いだ。子供は親を選べないものね、運命は時として残酷である。まあ、私の両親はすごくいい人達でたくさん愛してくれたから、顔についてとやかく言うなんて馬鹿らしいんだけど。
気が付いたらエネコになっていて、自覚した時にはアリスの手持ちとなっていた私に人生の選択肢など与えられなかった。そこらのポケモンに比べれば裕福らしい良い生活を送っているし、彼女はバトル好きなわけじゃないから私としてはありがたいしで決して文句はないのだけれど、強いて言うなら私はこの世界に来たからにはやりたいことがあって、それはどちらかと言うと野生であった方が動きやすいものだということなのだ。
やりたいことというのは、題して『キャラめぐりをしようの旅』というもので、画面越しに見ていたキャラに会ってみたいと不純な動機によるものだった。本能のおもむくままに家出をしようかと考えたこともあるが、実行に移しきれなかったのは憧れていたニート生活が実現したことによるものが大きい。ただ美味しく高級なご飯を食べて、ふかふかの私専用のポケモンベッドで寝て、暖かな陽があたる所でごろごろしていればいい。パソコンがつつけないしゲームも出来ないというのが少し難点だけど、全体的に見れば天国のような暮らしだった。こうして時々アリスに誘われて散歩をしなければ、ぶくぶくと太ってしまうくらいに。
だがしかし。野望はそう簡単に諦めきれるものではなくて。
今シロガネ山にいるのか分からないけど、取り敢えず原点にして頂点なレッドさんに会うのは私が『そらをとぶ』を覚えるのと同じくらいに無理だと思うので諦めて、同じくグリーンやマツバやデンジなどといった他地方の方々に会うのも無理そうなので希望は持たないことにした。万が一もしかしたらこっちにくる可能性がなきにしもあらずだから、散歩に出かける時はすれ違う人の顔を隈無くチェックするが未だ成果はない。それは一番遭遇確率が高いはずのダイゴやミクリ、ホウエンのジムリーダーを含めてだ。言ってはなんだけど、ホウエンのジムリーダーはマイナーであるしそこまで需要がなかったと記憶している。私自身四天王の顔すら忘れているため、ホウエン特産のダイゴに会えればいいかなと思う。あわよくばユウキやらハルカやらに会いたいが、それはまあ二の次だ。もしかするとレッドがサトシだったりグリーンがシゲルだったり、はたまたブルーやイエローなどカラフルな名前の子がいたりするかもしれないが、それは追々。目指すべき今の目標は石マニアに会うことである。
アリスと住んでいるここ、カナズミシティはデボンコーポレーションがあるから、決して無理なことじゃない。あの人は脱走犯なのでムロとかの方が確率は高いかもしれないが、可能性が0ではないからまあ気長に待とうと思う。




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