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call the name 1



生まれ変わりを信じますか?
または前世の存在を。
少なくとも私は信じていなかった。希望としては生まれ変わりとか転生とかあって欲しいけれど、実際自分が前世のことを覚えていないので、一生を終えたらそのまま消えてしまうのだろうと考えていた。
のらりくらりと生きてきてその時は高校生活を送っていたところだったのだが、ある日の帰り道に子猫が道路を渡ろうとしているのを見つけた。危ないなあと見守っていると、タイミングを見計らったのか子猫はとたとたと渡り始めた。しかし車道の信号は青。赤であっても横断歩道を渡るわけではなくその辺を突っ切るのだから、全くもって安全を保証出来ない。しかもタイミングを見計らっていた割にはすぐそこまで自動車が迫っていて。
一瞬の間に助けるか自分の身を優先するかの脳内会議が行われて、普段なら轢かれませんようにと祈るだけなのに、何を結論付けたのか車に轢かれそうになった猫を庇って一生を終えてしまった。なんてベタな。
そして気が付いたら私は猫になっていた。それもただの猫じゃない。ピンクの体で線を引いたような細い目に加え、花のようなしっぽ付き。愛玩動物として女の子に大人気の可愛らしい子猫。別に自分の容姿を自慢しているわけじゃなくて、本当にそういう説明がされている生き物なのだ。
陽が射し込む暖かい窓辺でくつろぎながら、くあ、とあくび。
パタパタと誰かの足音が聞こえてぴくん、と耳が動く。この部屋の持ち主の足音だ。
カチャとドアが開いて入ってきたのは私よりも幾分か年下な女の子。ふわりとリボンで結った癖毛が揺れる。こっちまで近寄って来て優しく頭を撫でられ、ゴロゴロと喉が鳴った。そんな私を見て彼女は笑う。今日も可愛いですよ、お嬢様。

「エネコ、お散歩に行きましょ」
「ねー」

早い話、ポケモン世界に転生したようなのだ。




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