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call the name 6



あれからさらに技を出してみた結果、冷凍ビームは冷凍ビームだが、ねこのてによる冷凍ビームであることが分かった。
ねこのては本来、他の手持ちポケモンの技がランダムで繰り出せるものであるが、アリスは私以外の手持ちを持っていない。そこから考えるに、私の場合は何故か、技マシンでエネコが覚えることのできる技を、ねこのてでランダムに出せるということのようだ。
しばらく練習を繰り返すと、冷凍ビームを出す時と、シャドーボールを出す時とでは、手の感覚が少し違うことに気付いた。力の入れ具合とか、手に感じる雰囲気とかが、それぞれの技によって微妙に違うのだ。ここを極めれば、自分の思い通りの技が出せるようになるのでは、と技の感覚を忘れないように何度も繰り出し、その努力の結果、冷凍ビームだけはいつでも出せるようになった。素晴らしい。
そんな感じで、ねこの手による他のいろんな技も自分の意思で出せるように励みつつ、レベル上げのために時たま野生ポケモンとバトルしていたある日。

「エネコ、この中からあなたの素敵な旦那さまを選んで欲しいの」

なんと、ダイゴさんの手持ちのポケモンと、結婚させられそうになった。
目の前に広げられた厳つい感じのポケモン達の写真に、私は恐れおののいた。ポケモンと、結婚だなんて…!
くるりと踵を返して、その場から即刻逃走した。
いくらこの姿に慣れたからと言っても、私の心は人間だ。友達ならまだしも結婚だなんて、異文化交流じゃ済まされないんだぞ!無理、生理的に無理だ。
きっと、ダイゴさんの手持ちと私をくっつけて、親密度アップを図ろうとしたんだろう。でもアリスは純粋だから、そんなこと思いつくはずがない。誰がアリスに入れ知恵したんだよバカー!予想するにたぶん、メイドだろうけど。
入れ知恵したメイドもメイドだけど、アリスもアリスだ。まあ、アリスは私のことを半分友達だと思ってる節があるから、きっと、エネコと恋バナできるわ!くらいにしか思っていないんだろうけれど。……可愛いなあアリス。さすが私のお嬢様。
そして向かった先はいつもの練習場所。もやもやした気持ちで、気の向くままにふらふらと更に森の奥に入って行く。と、ふと目に飛び込んできたのは。

「ねえ!(猫じゃらし!)」

理解するが早いか、自分の意思に関係なく、気が付けばごろごろと喉を鳴らしながら地面に寝っ転がり、猫じゃらしと戯れていた。ハッと脳が我に返るも、身体は止まらない。取り戻した自我も、しばらく経てば猫じゃらしの魅力に負けて、失ってしまった。猫じゃらしの威力って怖い。
一心不乱に猫じゃらしにまとわりついていると、突然、自分の身体が光りだした。
な、何事!?
今度こそ我に返って、対象しようのない事態に慌てふためく。まさか、進化!?いや、でもエネコはつきのいしで進化するはず……。
そうこうしているうちに輝きは増し、あまりの眩しさに目をつむった(元からつむっているんじゃないかというツッコミはしないで欲しい。一応開いているんです、一応)。
が、すぐに瞼の向こうに光を感じなくなり、そっと目を開ける。
……ん?なんだかやけに視界が高いぞ…?
やっぱり進化したのか?と自分の身体を見下ろして……カチンと固まった。
しばしの硬直後、ゆっくりと手を目の前に持ってきて、ぐっぱっと握る。指の数、1、2、3、4、5。肌色、たくさんのしわ。

「……戻った?」





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