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call the name 5



痛いのは嫌いだ。
だから、バトルなんかせず私をただ可愛がるだけのアリスのもとにいられるのはとても幸運なことだと思う。野生に暮らすのが一番かもしれないけれど、バトル狂にゲットされる可能性もあることを考えると、やっぱり今の暮らしが最も適しているのではないかと思うのだ。
痛いのは嫌いだがしかし、せっかくポケモンになったのだから、試したいことがあるのも確かで。つまりは、ポケモンの技というものをやってみたいのだ。
アリスの家は隅から隅まで綺麗に手入れがされていて、それは広大な庭も例外ではなかったから、使い方をいまいち掴みきれていない状態で技を繰り出すのは憚られた。どうにか頑張ったらいけそうな気がしなくもないが、技の具合がきちんと分かるわけでもないし、加減の仕方も分からないので、もしかすると辺りの物を破壊してしまったりするんじゃないかと思ったからだ。
そのため、エネコになってから一度も技を使ったことがない。こんなにもったいないことがあるだろうか。
この先も試すことはできないんじゃないかと思って、諦めかけていたが、先日の脱走により、私はハッと素晴らしいことに気付き、希望を取り戻した。もう一度脱走をして、その辺の森で存分にやればいいんじゃないか、と。
幸いなことに、私が脱走したからといって、今以上に警備を強化するなんてことはなかった。これならまた脱走できる!と、私は意欲に燃えた。
そうして迎えた作戦決行の日。私は無事に脱走することに成功した。とはいえ、今日はいけるかもしれないというただの勘で脱走したので、実際は作戦もくそもない。
キョロキョロと辺りを見回して、石好き脱走犯の姿がないか、よくよく確認する。今度は目的が違うのだ、間違っても捕まるものか。指差し確認、出発進行!
それから目指したのは近くの森。カナズミシティから洞窟のある方向に向かう途中の町外れだ。
短パン小僧やミニスカートに会ったらバトルになりそうな気がするので、誰にも見つからないようにこそこそと、人気のない所まで移動する。
そうして、いい場所に着いたところで、ふむと考え込む。目的達成のための準備が整ったはいいが、肝心の技の出し方が分からない。
たいあたりは無難なところだろうが、物理技は正直怖い。技を出す時は体が強化されるんじゃないかと予想できるけれど、それが本当だという保証はない。その辺の木にたいあたりして、頭がかち割れそうな痛みに襲われるのはご遠慮願いたいもの。
……エネコと言えば、ねこのてだよなあ。
ふと、自分の短い手に視線を落とす。こんな小さな手からいろんな技が出るものなのか。不思議だ。
おもむろに手を上げて、何か技が出ないかなと思いながら、力を込めてぶん!と振ってみる。
――パキパキ、パキ

「ねえええええ!?」

なんじゃこりゃあああああ!?
驚きのあまり、腰が引けてしまった体勢のまま、固まる。振った瞬間、手から水色のビームのようなものが飛び出し、向かいにあった木を凍り付けにしたのだ。
……冷凍ビームじゃない?これ。




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