「何でも良いよ。いつもみんなのために、ヒーローで居続ける君に、プレゼント。私にできることなら何でも叶えてあげる。今ならダメだって言ってたオールマイトの抱き枕もプレゼント可能です」
「えっ」
オールマイトの抱き枕って名前ちゃんがこれだけはごめん買わないで欲しいって言ってたやつだ等身大オールマイトがプリントされた抱き枕カバー受注生産だから確かに今でも間に合う買わないで欲しいって言われたから諦めたし名前ちゃんという恋人を差し置いてオールマイトを毎日抱き締めて寝るのは気が引けたから見なかったことにしたけどオールマイトファンとしては欲しい抱き枕にしなくてもいいから持っておきたいだって等身大ってところがポイントだオールマイトの身長に合わせて作られてるそして中にクッションが入ることによって等身大パネルよりもより一層オールマイトの存在をより三次元的に感じることができるグッズそう三次元的に感じられるグッズでいうと抱き枕が今までの中でも最も秀でている……。
ぶつぶつぶつぶつ。
デクくんのひとりごとタイム降臨である。
今日はデクくんの誕生日。誕生日ならプレゼント。優しいデクくんならなんでも喜んでくれると分かっていたし、オールマイトのグッズをあげたらまずハズレはないと知っているけど、自身を投げ打って全身全力でヒーローをやり続けているデクくんが、今一番欲しいと思うことをあげたかった。
オールマイトのグッズでもいい。温泉旅行でもいい。カツ丼パーティーでもいい。
本当に何でも、彼にとって一番嬉しいことを与えたかった。
念仏のようにひとりごとをぶつぶつ続けるのを漏れ聞いて、これはオールマイトの抱き枕を購入からの使用許可かな?と当たりをつける。
大丈夫。私には給料日翌日のクレジットカードという魔法のアイテムがついている。
任せてデクくん。必ずや君の願いに応えて見せよう。
彼の様子をにこにこと眺めていると、彼はパッと顔をあげた。大きな丸い瞳が、決めましたとばかりにきらめいている。
「名前ちゃん」
「はい何でしょうデクくん」
「何でもいいんだよね?」
「何でもいいよ。女に二言はありません」
「じゃあ、」
お腹いっぱい君をください。
「……ん?」
「何でもいい、んだよね」
念を押すように、にっこりとデクくんは微笑んだ。
ーーうわあ。
「……今めちゃくちゃあの顔したい」
「なに?」
「デクくんの梅干しみたいな顔」
「酷いな、言いたいことは分かるけど」
大人になった今ではすっかり、照れました!って顔全体のシワを寄せてする表情をしなくなった彼は、こっぱずかしいことを言っておきながら照れた様子ひとつ見せない。
代わりに私は、ギュン!となった顔を隠すべく、両手で顔を覆った。
お題『お腹いっぱい君をください』