「そこの君、バトルしようぜ!」

てくてくとイーブイを連れて歩いていた少女を見つけて、声をかけた。メリープのレベルを上げたかったところだったので、あのくらいの少女なら、丁度いい練習相手になるだろう。見たところそんなに強くなさそうだし。

「私ですか?」
「そうそう、君」
「だってさ、イーブイ」

少女がイーブイに声をかけると、イーブイは「ぶいっ」と力強く鳴いた。それを見て、少女はこちらを向く。

「いいですよ」
「よしきた!」

少女と適度な距離を開けて、モンスターボールを手にとる。

「俺はマサル!よろしくな!」
「私はマサラタウンの名前です!よろしくお願いします!」

お互いの自己紹介も終わったところで、ボールを宙に放り上げた。

「頼むぞ、メリープ!」

パカン!とボールが開いて、中からメリープが飛び出す。元気よく鳴いて、気合い十分なようだ。
さて、相手のポケモンは、と顔をあげると。

「うわああああ…!」

やたらと目をキラキラと輝かせた名前がメリープを食い入るように見ていて、若干戸惑う。

「そのポケモン!なんて名前なんですか?」
「え、メリープだけど」
「メリープ…!」

ふるふると拳を揺らして、少女は感極まった声音でメリープの名前を叫んだ。な、なんだ、この子。そんなにメリープが珍しいだろうか。いや、名前にとったら地方のポケモンだから、知らないのかもしれないけど。……あ。ということは、メリープのタイプも分からないはずだ。
有利なバトル展開になりそうだと、内心ほくそ笑む。さて、相手はどんなポケモンでくるのか。

「あ、あの!」
「なんだ?」
「もし、私が勝ったら、メリープをもふらせてくれませんか!」

もふ…?
触りたい、ということだろうか。確かにメリープの毛は触りたくなるようなものだし、それは別に構わない。
名前に頷いてみせると、彼女はパア、と顔を輝かせた。勝ち負けにこだわらなくても、触りたいなら触らせてあげるのにな。でもまあ、彼女がそう言うならそれでいいか。と思いながら、名前の出方をうかがう。

「よし、頑張ろうイーブイ!」
「ぶーいっ」

ととっ、とイーブイは名前の前に進み出て、前足を軽く曲げて体勢を低くし、構えた。
タイプ相性は良くもなく、悪くもない、か。ふむ、と顎に手をあてる。
電気タイプの技は不意討ちで出してやろう。まずは様子見だ。

「いくぞメリープ!でんこうせっか!」
「イーブイ!シャドーボール!」

駆け出したメリープに、イーブイの繰り出したシャドーボールが迫り来る。

「よけろ!」

でんこうせっかで俊敏さが増したメリープは、複数のシャドーボールを避け、イーブイの目の前に到達した。

「すなかけ!」

が、イーブイは前足を蹴り上げて目前のメリープに砂を撒き、素早くその場から跳び去った。メリープは立ち止まり、目に砂が入ったのか、わたわたと落ち着かない。

「メリープ!」
「イーブイ、かくれんぼだよ!」

メリープの様子に気をとられていると、名前が指示を出した。ハッとしてイーブイを探すが、その姿は見当たらない。
メリープは砂をどうにかしようと、懸命に前足で目元を擦っている。
あの状態では、どうしようもない。見えなくても、何か使える技はないかと思考を巡らせる。と、向かいに立つ名前がにやりと笑うのが見えた。

「あのもふもふ具合、毛並み、実際に触ってないから確実じゃないけど、そこから判断すると、メリープは電気タイプに決まってる!いっけぇイーブイ!穴をほるーっ!」

ボコ、とメリープの足元の地面が盛り上がる。まずい、と思うも、既に遅かった。

「ぶいーっ!」

地面から飛び出したイーブイの一撃がメリープに決まる。衝撃で吹っ飛んだメリープは、地面に叩きつけられ、くるくると目を回していた。

「よしっやったねイーブイ!」
「ぶいぶい!」

名前のもとに戻ったイーブイは、ぱたぱたとしっぽを揺らしながら、得意そうに胸を張る。
……ちょっと待て。
意外に名前が強かったとか、一撃でメリープを倒すなんて結構レベル高かったんだとか、いろいろと思うことはあるけれど。
……そんなタイプ判別の仕方ってあり?





もふもふバトル、もふり隊!
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