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23/09/02(Sat):twst

天気が良いのでシーツを洗った。風にパタパタとはためくのを見つつ、ぐんと伸びをする。
空の青と、シーツの白と、地面の緑。爽やかで気持ちの良い光景だ。
ふっと頭に浮かんだフレーズ。続きの洗濯物を干しながら、ふんふんと鼻歌をうたう。
「ふな?ご機嫌なんだゾ?」
ごろんごろんしていた猫が尋ねた。それはグリムでしょう、と返したかった監督生は、返事の代わりに彼の眉間を撫ぜる。そろそろお昼の時間だ。なんとなくご機嫌だった彼女は、鼻歌から連想した映画の光景が脳裏を流れていた。草原を、バスケット片手に、弾んで歩いて。
女性と子どもたちはピクニックをして、大自然の中でのびのびと歌っていた。そう、あの中にも青と緑と白があった。今日の学園は休日。校舎の方には一定の部活動員以外は訪れないだろう。大抵の生徒は寮に引きこもっているか、学園外に遊びに出かけているか、部活をしているか。つまり、人目はほぼない。
「グリム」
「なんだ?」
「ピクニックしよっか」

時計の針がひと回りと少しした頃。学園の中庭を目指すグリムと監督生の姿があった。彼女の手には蓋付きのバスケットがかけられ、その足取りは軽い。スキップ、とまではいかないが、リズムを刻んでいるようにも見える。
彼女の足元を、猫型スキップとでも言えば良いだろうか、たんたたん、と緩急をつけてグリムが歩いていた。さて、いったい何のリズムをとっているのか?と耳をすませば、ふたりの歌声が聞こえてくるだろう。
「ど、はドーナツのど」「れ、はレモンのれー!」
リズムに合わせて、歩幅が変わり、ステップを踏みながら進んでいく。
「み、はみんなーの、み」「ファ、はファイトのファー」
バスケットを遠心するように、歩みを刻む足でくるりと監督生は一回転した。
「そ、は青いそらー」両手が上に上がる。
「らはラッパのらー」上げたままの、バスケットを持たない方の手で、監督生はグリムと目を合わせて4拍子の指揮をとる。
「し、は幸せよー」グリムが四つ脚でトン、と跳躍。そのままふたりでハイタッチ。
「さあ歌いましょう!」
同じフレーズの短い歌。ひとつ覚えのように何度も繰り返しているが、飽きる様子はない。確かにリズム感は良く、思わず体を動かしたくなるような歌ではあるが…。
と、リズムはそのままに、歌詞が変わった。
「Do, a deer, a female deer。Re, a drop of golden sun」
「Mi, a name, I call myself」わずかな一拍の合間に、「ユウ!」「グリム!」とそれぞれの合いの手が入る。「Fa, a long long way to run」



21/12/12(Sun):おしごとシリーズ スーパーウルトラ派生

◎透田概念卒業後夢主

「こんなに!」
両の手を広げて、ぐっと握って、胸にドンと拳を当てた。
「ーー伝わってるでしょ!?全部!先生、なんでそんなこと言うの……!」

陽の下で笑うお前の姿が、自分にもったいないくらい眩しいと、腑に落ちたからだ。なんて、我ながらくさ過ぎる台詞だ。
自分の頭が生んだ言葉だと思えないくらいで笑ってしまう。ヒーローから小説家に転職できそうだ。
歳の差がある。都合のつかない仕事。己より他者を優先する身。ただでさえ元生徒と関係を持つことがどうなんだと言われる仕事柄。
普段から、背後で隠れ蠢いていたものが、見ないフリをしていた障害物が、不意に飛び出してきた。
自分では幸せにしてやれない、とまでは言わない。が、もっと合理的に満足な人生を送れるような相手が、自分以外にいるのは確かだ。
それでつい、口に出た。
俺といていいのか、と。前置きも脈絡もない言葉。しかし、透田は全部汲み取った。
透田の個性は相手を想う心がそのまま影響を与えるもの。だから言われなくても分かる。もちろん伝わっている。伝わってくる。なんでそう言うのか、ってそりゃあ。
「お前にしあわせでいて欲しいからだ」



21/12/12(Sun):トリップ監督生 twst

フロイドリーチというウツボの人魚がたいそう怖かった。数多の考察を見て、なるほどそういう意図もあるのか、彼なりの愛情表現をするならばこういう感じなのか、もし仲良くできたならこんな彼を見れるのか、なんて妄想の一部を齧っては、恐ろしい取り立て屋さんを深掘りした。素敵な一面もあるのねと。
しかし、本当の彼に触れれば飛び出す台詞はナイフのごとく、どう考えても何も持たない一生徒、どころか連む兄弟やタコに対しても、優しさのひと匙すら掬えやしない。みんないったいどうやって幻覚を見ているんだ。幻覚すら見る隙もないキャラなんだが。
独特の喋りで、ふらふら不安定な口調で、対応を間違えれば友人柄でも肩を叩いて笑い合った次の瞬間に長い脚で肋を砕かれ、ノコギリみたいな歯で噛み切られて、今夜の食材ゲットぉ、ジ・エンド。どう足掻いてもレストランの厨房に突っ込まれる未来しか想像が働かない。
仲良しになる世界線を思い浮かべてみても、二言目にはレールの分岐器がガシャンと音を立て、バッドエンドへ自動運送爆走の道。考察を読んではどっぷり浸かって、語尾が伸びる話し方こそチャームポイントでツボなのよ、となるのに。声を聞けばカツアゲにシフトチェンジ。ただひたすらに怖い人、だった。
「あー、小エビちゃんだー」
気分屋で、読めなくて、誰かに乗せられることなく自由気まま。我が強いか軸がブレないか、以外の場の空気を読みがちだったり引っ込み思案だったりするタイプの性格の場合、狩猟意欲やいじめっ子気質を掻き立てられるらしかった。
無言のまま、聞こえなかった振りすらできない小心者は、振り返りはしないものの立ち止まる。
「聞こえてねーの?んなわけねーよな、さっきまで授業聞いてたもんね」
にこぉ、と笑う顔はチェシャ猫みたいだけど、その百倍凶悪にしたようだ。タレ目の笑顔は癒し系、という概念を破壊した唯一である。
自分が本当に小エビなら鉄砲玉みたくこの場を跳び去っていたのに。
一拍後には腕をへし折られるかもしれない、なんて恐怖心を毎秒抱きつつ、何ですか先輩と愛想をして見せる。
「アザラシちゃんはー?」
「エースと購買へ行きました」
「あっそ」
どうでもいいけど、なんて空耳が聞こえる。
この先輩の、自分が失言して機嫌を損ねたかもと思わせる言動が心底苦手だ。どうでもいい人なら感情で他人を振り回そうとする迷惑な人だと軽蔑するのに、こちらが悪いような気がしてくるし、向こうもそう思わせてくる。その上被害を被るのも、私なのに。身を縮こませて嵐が過ぎるのを待つしかできない。


◎ フロ監で前知識込みでめちゃくちゃフロが怖いし実際怖い避けたい、けど構ってくるフロに毎日心臓と胃がキリキリして泣きたい監督生の話



21/12/12(Sun):ネタ MHA

ちぃちゃい志村てんこくんを拾って育てたい。
個性:灰被り。体が灰のように砕けて舞うだけの没個性。かと思いきや物理攻撃は効かないし衝撃は粉々になって受け流せたりする。コントロールができてないとすぐバラバラになってしまうのが悩み。天敵は水。
対、とむらくん用とも言える個性。



21/11/11(Thu):twst

自業自得だと思った。契約書にきちんと目を通さず、条件を達成できなかった場合のリスクを鑑みず。うまい話には裏があるというのに、ひとつも疑ってかからなかったのだろう。自分だけがこんな美味しい話を聞けたなんて、噂になっていたのならそんなはずあるわけないというのに。
過去百年分の統計をとって作ったという試験対策冊子。そんなに手の込んだもの、ただでくれるわけがなかろう。しかも全学年、全教科分だ。成績が50位内に入ればいい?そんなの、提供する側には何の得もない。あなたが試験を切り抜けられるならそれでいい、なんてどんな善人だ。生粋の変人であったとしても、受け取ることが憚られるというものではないのか。ラウンジでしばらく労働することを条件にされたほうが、心置きなく虎の巻をいただけるというものだ。
せめて一年間くらいでも、こき使われても文句が言えないんじゃないかと思う。グリムたちを助けたい、なんて気持ちはないに等しい。自業自得だからだ。詐欺というわけでもなく、まっとうな取引だ。条件を達成できなかった場合、どうなるか聞いているはずだろうに、それでも呑んだのは自己責任。もし50位以内に入らなかった場合の想定は契約書に書いていなかった、とすれば、契約書にサインした側が気にしなかった点が問題である。
以上から、イソギンチャクから解放するなんてもってのほか。自分には関係がないので、どうぞそちらで勝手にされてくださいな、という話である。

「監督生〜頼むー!」

監督生は母親ではない。彼らの寮長だって、寮生を助けようとはしないじゃないか。他の寮も同様に。自分でした始末は自分でつけろと。自分の力で突破しようとしないところを叱られて、後は自分の責任だと投げられている。それが正当な態度だ。
アズール・アーシェングロットの行いを止める。それは学園長が、立場を盾に脅されて困るから、その一点しかないじゃないか。生徒が自分の意志で契約をしているのなら、知った事じゃありませんと言えばいいのに。優しいので、ととってつけたように言って、教師が生徒を見捨てるわけにはいかないから、なんて。契約は卒業までと期限が決まっているのだし、生徒には社会勉強だと己を省みる機会にでもすればいい。そんなに契約を止めたいなら、去年のうちに、ラウンジを開くことを認めるが来年からはやめるようにとでも、制約つればよかったのに。
なんて、並べ立てても結局、自分も学園長に生活の基盤という弱みを握られているのだから、どんなにやりたくなくたって逆らえるわけもないのだけれど。

「……」

グリムもエースもデュースも好きで友達だけれど、それは何でも許して受け入れることと同義ではない。好きでも許せない部分や嫌いなところがある。あっても好きだから友達なのだ。友達だから対等で、都合よくはいかないのだ。
うるさい知らない、と喧嘩できたらどんなにかいいか。
む、と引き結んでいた口を開く。

「……じゃあ、もしイソギンチャクから解放することができたら、何でも言うこと聞いてくれる?」
「え゛」
「その契約みたいなことはしない。何か一つ、可能な範囲で」
「ツナ缶食べちゃダメーとかは嫌なんだゾ……?」
「それもありで」
「ふなっ!?」
「監督生、ランチ奢るのは……?」
「そんな、今の話じゃなくて、ちゃんとイソギンチャクが取れてから」





21/11/10(Wed):愛なんて綺麗なものじゃない ホークス

ホークスの翼に包まれる時。飛んできた羽根がエスコートしてくれたり、些細な手伝いをしてくれたり、見て守られているのだと感じる時。暖色が相乗して勝手に愛が可視化されたようだ。百本の薔薇みたいだねなんて聞いて、男は苦笑い。「愛なんてそげん綺麗なもんじゃなか」



21/11/02(Tue):とうらぶ

一国の主ってやつになってみたかったのだと思う。
どこぞの宗教かと疑いたくなるような胡散臭い時の政府とやらにお呼ばれされた時、審神者になると決めた私の心の一端にはおそらく、そんな思いがあった。
一人暮らしをして会社に行く社会人が、一般的な独り立ちした大人であるが、自立は確かにしているけれど結局は誰かの下についてあくせく動き回る働き蟻じゃないか、と思ったりする。かと言って国のトップになるかと聞かれたらすかさずいいえと首を振るけれど。
上に立つ責任はありつつも、ある程度の高さに立つことを認められて、信頼できる部下がいて。兵を束ねて率いるナポレオンのような姿を想像したら、かっこいいなと思った。女主任ではない。女城主だ。
隔離世での生活は寂しく思うこともある。しかし自分たちが食べる食材を育て、部下に指示を出し、作戦を考え、書類を作成し、確立した勝利を得る。
一連の営みは、自立的で他をも支える、立派な生き姿だと思った。胸を張って、己の人生にはこれこれこういう勤めがあり果たしましたと、死後の世界で次の転生の判決の際に宣言できるほど。高校受験の時だって、バイトの面接の時だって、さあどうだ選別してみよなんて喉をそらす気持ちで言えた事はない。



21/10/21(Thu):最新刊のおでこに救われた話 爆豪

爆ごーくんのおでこには希望が詰まっているのだ。なんて言ったらゴミを見るような目で見られるに決まっているので、思うだけに留める。口から出るのは形がチクチクトゲトゲしたものばかりで、歯茎が見える角度で顎の関節は捻らせるて煽る、どこからどう見ても他人を見下ろす顔で生まれてきました、なんて強烈に綺麗と怖いが共存する顔面をしているくせに、ハリネズミばりの前髪の下には、まろく毛穴ひとつない色白のおでこが隠れているのである。それをこの世の神秘のひとつに認定したい。ビックバンが起きて宇宙が誕生したくらいの衝撃であったのだ。初めて見た時に。
お茶子ちゃんのほっぺはお餅のようにもちもちで、でっくんの童顔の下はガチムチで、ろきくんの顔面国宝の中はど天然、いーだくんの眼鏡はストック百個、なんて驚きを全てをひっくり返す程の威力をもって襲いかかってきた。チラリズムなんて目じゃない。額だ。ただのデコだ。だのに何より神聖な、爆ごーくんのおでこ。女の子には可愛いとときめきが詰まってるなら、愛と希望と赤ちゃんみたいな愛らしさが詰まってるのが爆ごーくんのおでこなのだ。



21/10/02(Sat):手 デク

触れたのはかさついた指の腹だった。肌に当たるだけで分かる、皮膚の厚み、手の大きさ。脂肪と皮だけの二の腕を掴まれて、表面を往復してなぞる温度に息が震える。
春の芽吹きのようだった彼は、季節を経て締まった深緑の大樹のよう。
柔らかさの削げた顔で、その手一つで動揺する私を静かに見ていた。



21/05/30(Sun):書きかけて放置されてた本丸話

最初の一振りを選んでください。
ずらり、並んだ五人の男子。いや、五刃の男士。それぞれの説明について見るも、生憎歴史に詳しくないもので、気になるのは性格のみだった。「うんん、金ピカの人は見るからに合わなそうだし、雅の人もなあ。嫌いじゃないけど、私自身が雅のかけらもないから合わないだろうし。坂本龍馬は分かるけど、好きというわけでもないからな……。布の人は王子系と見せかけてネガティブ男子……ネガティブがネガティブを連れて新生活……共倒れしそう……。黒髪の子は、愛されたがり……愛着傷害なの……?待って、クセ強いのしかいなくない?」



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