赤と緑
エイプリル企画ログ

グリーンがすきだ。別に恋愛とかそういうんじゃない。そういうんじゃないんだけど、別に友情なんてちっぽけな器に収まりたいわけでもない。上手くは言えないけれど、そうだなあ。手は繋ぎたいと思う。抱き締めたいし、抱き締めてほしいと思う。一緒のベッドで眠りたいとも思う。でもそれは、不純な行為のためではなくて、ただ純粋に一緒にいたいからだ。だから、キスはしたいけどそれ以上は望んでいない。ただ一緒にいられればそれでいい。それだけで、俺の空っぽの心は満たされるのだ。
(ああ、それってすごいなあ)
すごいことだなあ。心底そう思った。そして、そう思うことの出来た自分を誇らしいとも思った。右手がグリーンの指先を求めているのを感じていた。

「レッド!」
「、なに」
「ボーっとしてんなよ。夕食出来たぞ」
「ああ、うん」

背後からのグリーンの声に驚いた自分がいた。いや、気配は感じていた、と思う。しかしそれを通さないくらいに、ボーっとしていたのだろう。馬鹿みたいだなと脳内で少し笑ってみたけれど、よく考えるとそれはすごいことなんじゃないだろうか。人間は背後に壁があると落ち着くと聞いたことがある。俺もそれはよく分かるし、壁を背後に座ると安心して考え事にふけることが出来る。別に今はそんな状況じゃあないけれどそういった時と同じような、不思議な安心感があった。ちらりと横目でグリーンを見上げて、ああそれはグリーンがいたからなんだなあと思ったら、なんだか口元がだらしなく緩んだ。

料理の盛られた皿を運んで席につくと、グリーンは俺の向かい側に座った。二人して手をあわせ、「いただきます」と呟いた後、俺は料理へと箸を伸ばした。それを口に入れると、いつも通りの味がした。おいしい。グリーンは、料理が上手だと思う。そんな中目の前のグリーンが口を開いた。

「今日鼻つまっててさあ、ホラ声変だろ?だから味見してもよく分かんなくって。どうだ…?」

驚いた。何にって、それは鼻がつまっていようと全く変わらない味を維持したグリーンに対してだったり、グリーンがそんなこと聞くなんて珍しいなあということだったりと様々。しかし一番は、そこでするりと言葉が口から溢れた自身に対してだ。

「いつもの方が美味しいよ。グリーン鼻づまり酷いんじゃない?」
「げっまじかよー。大丈夫だと思ったんだけど。やっぱ毎日食ってると分かるもんなんだなあ」

そう言ってグリーンは笑った。そうして初めて気付いた。俺はグリーンのことがすきで、それでいいと思っていた。でも違う。おれは、ぼくは、グリーンに愛されていたかったのだ。グリーンにも僕を好きでいてほしかったのだ。
他人とは違うんだよ。いつだってグリーンのご飯を食べてるんだから、ほんの少しの違いだって分かるんだよ。そうやって嘘をついて、僕のこともちゃんと特別に好きでいて欲しかったのだ。

(なんだ、そっか)

そうなんだ。と理解した俺は、がたんと椅子から立ち上がると正面に座るグリーンに背中からぎゅう、と抱きついた。グリーンは驚いたようだったけれど、何も言わずに俺の腕をゆっくり、ぽんぽんと叩いてくれた。そうして繋がれたグリーンと俺の指から伝わる体温は、誰の幸せにだって負けないものだと思った。

―――
(透明な嘘)
タイトル→ギルティ
(100331)

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