▼ 豪炎寺
(豪炎寺)
「うーん…何かやだな」
「そうか」
「なんだろうね、やっぱやじゃないや」
「そんなものだろう」
「…怒った?」
「いや、別に」
ぽつぽつと交わされる言葉。長い言葉は交わさないけど、会話と呼べるのか微妙だが会話は成立する。余計に踏み込んでくることはないし、必要な時は踏み込んでくれる。脈絡もなく、本当に何となく口に出した言葉を拾ってくれる。だから修也との会話は好きだ。
ちょうどいい速さで返してくれる言葉や、高すぎず低すぎず、私の耳に馴染む声で進む会話。私から話し掛けても、修也から話し掛けても、無理に相手に合わせる必要なく進む会話は、私の好きなテンポの会話。だから、修也の会話のテンポは好きだ。
ぽつりと返してくれる言葉の端には、優しさが見え隠れしたりする。基本的に、根本的に修也は優しい。言葉も、例えそれがきつい叱咤であろうとも優しい言葉だと感じられる。だから修也の言葉は好きだ。
「修也、楽しい?」
「ああ、落ち着くからな」
「そっか」
「お前はどうなんだ?」
「私?私は…」
今みたいに、楽しいか聞いて落ち着くからと返ってきたりする、噛み合っているようなないような返事。それはただ返されただけのものもあるし、私や他の人を導く返事だったり、様々だ。だから修也の返事は好きだ。
修也との会話は、落ち着くから好き。修也の会話の声は馴染みやすくて、テンポは私が好きなものだから好き。修也の言葉は優しいから好き。修也の返事はいろんなことを教えてくれるから好き。
たまに見せる修也のその笑みが好きだ。
だから、修也と一緒にいるのは好きだ。
「…私はねえ、修也が好きだよ」
「そうか。俺もお前が大好きだ」
そう。だから、私も修也が大好きだ。
++++
初代拍手御礼。