蛇足メモ | ナノ
 
紫陽の実家との因縁

彼女の家はイッシュ御三家の一つでダイケンキの本家のような場所だった。そして彼女の母は現当主であり、当主の仕事を果たす為に手段を選ばない女性だった。彼女にとって家族は利用すべきものでしかなく実の子にも愛情は一切芽生える事はなく、紫陽も結局最後まで名前を呼ばれることすらなかった。
彼女の父は元々旅人だったゾロアークのヨルガオという男性であり、彼は若い頃に外の世界で紫陽の母と出会って半ば無理矢理屋敷に連れてこられ、子孫を残す為の種馬として屋敷に幽閉されていた。一応結婚という形はとっていたらしいが屋敷での彼の立場は酷いもので、殆ど自由は与えられず紫陽の母の良いようにされていたらしい。
それでもヨルガオは自身の子どもに対しての愛情は持っていたようで紫陽にとって親と呼べるものは彼だけだった。紫陽という名前も彼が好きな紫陽花からつけてくれたもので紫陽は今でも気に入っている。
紫陽は彼女の母とヨルガオの間に出来た三人目の子どもで、紫陽より先に生まれた男の子たちは本家には不要だからと全員余所にやられた。なので紫陽は兄がいた事すら長い間知らずに過ごすことになる。未だに彼らが何処にいるのかを紫陽は知らないでいる。母は彼らを紫陽の相手にすることも計画していたらしく居場所を把握していたらしいが紫陽はそれを聞く前に母を殺してしまったので結局分からずじまいになった。
母にとって紫陽は次期当主としての価値しかなく、それ以上の事は一切求められなかった。当主になる為の教育も半ば無理矢理させられたようなもので幼い頃の紫陽はそれに度々逆らっていたがその責任を父が取らされている事を知ると一切母に反抗するのをやめてしまった。
そして紫陽が10歳になった日、突然ヨルガオがもう不要になったという理由で屋敷から追い出されてしまうと、彼女の生活は一変した。それまではまだ父がいるからと耐えられたその場所での生活が嫌になり、再び徹底的に母への反抗した。そして15になる頃には紫陽自身も屋敷から一歩も外に出して貰えない状態になるが、その頃に他の家、ジャローダやエンブオーの家の次期当主であるガルデニア、メイプリィと出会い、彼女たちと親しくなる。そして彼女たちや自分たちが当主となった先に待つ未来を知ると、彼女たちの為にも狂った実家を滅ぼす事を決意して動き始める。今まで徹底的に反抗してきた母の言う事を再び全て聞くようになり、次期当主としての振る舞いもし始めるが、また急に態度を変えた紫陽を母は怪しみ、結局自分がまだ当主を続けることにして紫陽に早くに子供を産ませ、その子を次の当主になると決定を下した。
紫陽が旅に出たのはそんな話が持ち上がった直後であり、旅が終われば直ぐに跡取りを作ることを約束してひと時の自由を得ていた。だが旅の最中、彼女はパートナーと一緒に伝説の竜であるレシラムと遭遇し、味方にする。そして旅が終わってから実家には戻らず、ガルデニアとメイプリィたちを連れてカロス地方へと移住。そこで落ち着いてからレシラム、ゼクロムと共に実家の全てを滅ぼして漸く自由を得た。
が、紫陽自身はガルデニアやメイプリィの為とはいえ彼女たちの帰る場所をなくしてしまった事への罪悪感や、今までずっと母への憎しみの為に生きてきた為、彼女自身が生きがいをなくしてしまい折角自由になれたのに抜け殻のようになってしまう。そんな彼女が仲間たちに何も言わずふらりと何処かへと行ってしまった先に身を寄せたのが今の恋人の元であり、そこで彼女は再び生きがいを取り戻すことが出来た。
未だに自分のせいで父が苦しんだと思い込んでいて彼に対する罪悪感が一番酷い。彼が今、幸せに暮らしている事を知らない為に、一人で苦しんでいる。


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