バレンタイン前日





―――――2月14日―それは私にとって、マダラ先生に今までの想いを告げる一大イベントである。

私は何日も前から、マダラ先生のためにチョコ作りに専念していた。

普段料理なんてしたことがなかったから最初は凄く時間がかかってしまったが小南に一対一で週末に教わり、今では普通に食べれる程度まで至ることができた。

一番最初に作ったチョコは不味すぎて、吐きそうになった程に下手くそだった。


そんな私が今では食べれる程度のチョコを作れるようになったなんて……本当に嬉しい。


でも、私はまだ終わりにする筈がなかった。
更に美味しいチョコを作ってマダラ先生に「お前は料理上手なんだな…嫁に来ないか、彩…」と言われるまで頑張るつもり……!



「ってことで、是非とも試食してください。サソリ様」


「毒味役なら、デイダラにしてもらえ」


「オイラはあいつのために作ったチョコなんて食いたくねー、うん」


「毒味とかひどい!多分過去最高に美味しいと思うよ」



私は放課後に美術室に向かい、美術部部員である二人に昨日作ったチョコレートが入っているタッパーを差し出して、蓋をあける。



「……成る程な…出来栄えの点では上達してるな」


「食べてよ!美味しいからさ!」


「……おい、デイダラ…お前が最初に食べろ。」


「なんでオイラから先に!?前に食べた時、オイラ死にそうに…」


「デイダラ…試食しないと…あんたにはやんないからな」


「彩っ!……ぐぬぬ…」


デイダラは手を震わしながら、恐る恐る手に取り、眉間に皺を寄せながら口にチョコを入れる。
すると、表情が一転してチョコを食べ終える。



「うめぇ!彩、頑張ったな、うん!」


「そ、そう?良かったぁ…なんか嬉しい…」


「……デイダラ、それは本当だろうな?」


「旦那、コレ、めちゃくちゃ美味いぜ!食べてみろよ、うん!」


「どれ…オレが品定めしてやる」



サソリはそう言って、チョコを食べる。
かなり険しい顔をして食べていたけど、食べ終わった時には表情が変わっていた。



「……前よりは大分美味くなったな。オレがもらったチョコの中で一番美味い」


「マジ?!やったああ!!」



私は嬉しくて跳びはねていると、周りの女子部員が怪訝な顔をしていた。


「なんかさ、部員増えたよね」


「オレが美術部に入った数日後に部員が一気に増えた」


「サソリが入ったことで?なんでさ?」


「……教えてやろうか?」


サソリは椅子から立ち上がり、私を壁へと追い込む。
すると、デイダラが一人騒ぎだした。



「旦那!彩から離れろ!!うん!」



サソリはデイダラを無視して、完全に私を壁へと追いやった。



「……部員が増えた原因は…」


「……な、なによ…」


「……オレがイケメンだからだ」



……へっ?
私は余りの衝撃発言に固まっていると、急に笑いが込み上げてきた。



「ぷっ!何言い出すのかと思ったら…イケメンって自分で言うとか…やめてよ…ツボったじゃない…アハハハハ!」



私が笑っていると、サソリはあっけらかんとして固まっていた。
私はサソリから離れて、デイダラの元へと歩いた。



「でもさ、デイダラとかサソリとかさ毎年チョコ沢山貰ってるよね」


「う、うん…まぁな…だが、オイラは本命からしか受け取らないからな、うん!」


「そ、そうなんだ…なんか近い…離れてよ」



デイダラは私に近寄り、今にも息が掛かりそうだ。

何故興奮しているのか分からず、私は徐々に後退する。



「オレはチョコ貰っても、即行ゴミ箱行きだな」


「えっ!?なんでよ!折角女の子が頑張って作ったのに!」


「何入れられてるか、わからねぇだろ?あんなもんまともに食う奴はコイツか飛段ぐらいだ」


「おい、旦那!オイラは食ってねぇ!彩から貰ったチョコしか食ってねぇよ!うん!」


「えっ!?私があげたチ〇ルチョコ食べてくれてたの?嬉しい!」


「…ま、まぁな…うん。今年は…その…手作りだろ?うん?」



デイダラは顔を赤くして、モジモジしながら言っていた。
私はマダラ先生のためだけしか作らない予定だったから、少し困った。



「あっ!ごめん!私、マダラ先生のためだけに作る予定だったんだ…でも、もし余ったらあげるよ!」

「オイラは余り物…か…うん…」


「デイダラ落ち込むな、彩程度の女ならいくらでもいる。」


「でもさ…このチョコ…もう少しクオリティーあげたいんだよね、どうしようかな?」



私は自分で作ったチョコを見つめていると、サソリがタッパーを私から奪った。



「オレが直々に教えてやる。調理室開いてるか、お前ら調べてこい」


「えっ!?サソリ…料理出来るの?」


「当たり前だ。一人暮らしなめんなよ」



サソリが余りにも自信満々だったから、私はデイダラを連れて職員室まで走った。



「まさか、サソリがチョコ作るなんて…」


「悔しいが、旦那は何でもこなす男だからな…うん」

「へぇ…」



私とデイダラは職員室に入り、調理室の鍵を取った。


私達は鍵を持って、素早く美術室に向かった。



「サソリ!鍵、持ってきたよ!」


「よし…お前ら調理室に向かうぞ」


「旦那…張り切るのはいいが…他の部員どうすんだよ、うん」



サソリは一瞬部室から出ようとしていたけど、くるっと振り向き、他の部員に指示を飛ばす。



「お前ら、今日は解散だ」

「えぇ〜サソリ先輩、行っちゃうんですかぁ?」



キャピキャピした女の子達が不満の声を漏らしていたが、サソリは無視して調理室へと向かった。
私達は調理室に着くと、サソリは素早く鍵を開けて部屋に侵入した。



「よし…此れだけの材料が集まっていれば、上出来だ。」


「冷蔵庫の中にこんなに材料があるなんて…」


「旦那…これ無断で使っていいのかよ?」


「ばれないようにすればいいさ」



そう言って、サソリは私の手をとり、隣に私を立たせた。



「よく見とけ。まず、牛乳を…」



サソリはかなり熱心になって料理を教えてくれた。

色々注意されたけど、作り方を直ぐに覚えることができて嬉しかった。


……チョコ作りも終盤に差し掛かり、型にチョコを注ぎ込んだ。



「……ふぅ…やっと出来た」


「まぁ、これをタッパーにつめて家に持って帰って味見してみろ。かなり美味いぞ」


「うん!ありがとう!なんかサソリの事、見直しちゃった」


「……フン…」



私がそう言うと、サソリは少し照れていた。
すると、デイダラが私の隣に来て慌てていた。



「オイラは…その…チョコの渡し方を教えてやるぜ!うん!」


「チョコの渡し方?なにそれ」



デイダラは私にタッパーを持たせて、話し出す。


「ただ、渡すだけじゃだめだぞ、うん!」


「……好きです!じゃダメなの?」


「そん時に、かなり上目遣いじゃないとダメだ!練習がてらにやってみろ、うん!」


「……う、うん。分かった…やってみるね」



私はデイダラをマダラ先生だと想像して、やってみようと決意した。
私はタッパーを握りしめて、デイダラに近付く。


「……マ、マダラ先生…その…受け取ってもらえませんか?……先生への想いを込めて頑張って作ったんです…」



私はそっとデイダラに差し出し、上目遣いをしてみた。



「………!?!」


「……デイダラ…どう?」


デイダラはかなり顔を赤くして、口をモゴモゴしていた。



「……こ、今度は…マダラじゃなくて…デイダラ先生にして…ってふごぉ!!」



サソリはデイダラの頭にチョップした。



「やましいこと考えるな、童貞野郎」


「いってええ!旦那…何すんだよ、うん!」


「……結局…どうだった?これでマダラ先生をゲットできるかな?」


「わからねぇな……あいつはオレの予想をはるかに上回る奴だ、断定はできないな」


「そっか…」



すると、サソリは私の肩に手を置きフッと笑った。


「だが、チョコは完璧だ。これに文句をつけられることはねぇ…あとはお前の想いをぶつけるだけだ」

「うん!!そうだね!ありがとう、二人とも!」



私が礼を言うと、二人ともかなり照れていた。


……沢山教えてもらったから、二人にはチョコあげよっと


私達は片付けをして、ばれないように調理室を出た。


………ああ…明日はいよいよ決戦ね…マダラ先生…喜んでくれるかな…?


私はタッパーを握りしめながら、サソリ達とともに帰宅した。




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