林檎
「責任とってよ!イズナ!」
「朝から煩いな……何?」
オレは朝から忍具の手入れをしていた。
するといきなり小夜が怒鳴ってやってくるものだから驚いた。
「私の団子食べたでしょ!」
「あぁ、あれね。」
「無断で食べるなんて、ひどい!」
オレは確かに小夜の団子を食べた。まぁ、小夜の団子だから無断で食べてもいいかなと思って食べてしまった。
「あれは、店の前で30分もならんで買ったものなのよ!」
「それほど美味しくなかったよ。」
オレは小夜を無視して忍具を片付けようと小屋に向かった。
「ちょっと待ちなさいよ!」
「痛いな……何すんだよ……」
小夜はオレの後ろ髪を思いっきり引っ張った。小夜は怒っているのか眉間にしわが寄っていた。
「イズナ、謝ってよ!」
「謝ったら許してくれるの?…ごめんね。」
オレは淡々と謝り、忍具を片付けようと体を動かすと、また小夜が怒り出した。
「なんでいつも、素っ気ないの!?」
「………。」
…あぁ、煩いな。
オレは小夜を胸に引き寄せ、額に軽く口付けをした。
小夜はかなり驚いた顔をして、林檎みたいに赤くなっていた。
「……ぷっ。…顔真っ赤だね。林檎みたい。」
「………イズナ!許さない!」
そして、オレは小夜に散々追いかけられた。
野原一面に駆け巡り、小夜も疲れたのか、へたり込んでいた。
「…そんなに怒るなよ。」
「だって……イズナはいつも、あたしに冷たいんだから……」
素直になった小夜を見ていると可愛いく思えて、オレは小夜の頭をポンポンと叩いた。
「小夜、オレは好きな女の子には冷たくしちゃうんだよね。……小夜は特にね。」
「それって……?」
「教えないよ!」
オレは小夜を置いて、屋敷に戻ろうと走り出した。
後ろから待ちなさいよと叫ぶ小夜の声を聞きながら―。
ああ、小夜。オレは今幸せだよ。
明日もこんな日々を過ごせたらどんなに良いだろうか――。
オレと小夜は眩しい太陽を背にして、野原を駆け巡ったのだった。