第二話

――――――小夜視点



日の光が眩しく、今日は天気が良いのかと蔀戸を上げてみる


「小夜、駄目でしょう。蔀戸を上げては……外から見えてしまうでしょう」


「だって今日はとても良い天気よ少しくらい開けたっていいじゃない。」

堅苦しい生活ね。私は蔀戸を上げることすら許されていない、まして生まれてから一度もこの屋敷から出たことがない。まぁ、大名の娘として当たり前なことだ。


「小夜、貝合やらない?」


「御姉様、私は囲碁をやりたいわ。」


今日は何をして遊ぼうかしら。歌合もいいわね。


「小夜様大名様がお呼びでございます。」


女房が私に話しかけてきた。


「お父様が?珍しいわね…」



「大事な話だそうで……」


お父様が私に話があるなんて珍しい。
あまり話していないから、変な感じがする。
御簾を上げて父様の部屋に向かった。



「お父様…今日は如何なされたのです?」



「…………唐突に言うが、そなたには婚儀を挙げてもらおうと思うてな。」



「………。」



とうとう、そんな時期がやって来たのね。結婚なんてあまり乗り気じゃないけど、大名家に嫁ぐだろうから今の生活と何ら変わりはないのよね。御姉様達と別れるのは嫌だけど…。



「そなたには、うちは一族のものと婚儀を挙げることにした。」



「………。」


え……。今何と…
うちは一族?


「お父様、私は忍一族の者と結婚するのですか?」



「あぁ。そうだ。」



………嫌よ!
何故なの?普通は大名の娘は他の大名家もしくはその分家に嫁ぐというのに……。御姉様達や従姉妹だってそうだったわ。ましてや、あんな野蛮な忍と結婚する?
あり得ないわ。



「私は絶対に嫌です。御姉様達と同じように大名家に嫁ぐのが当たり前でしょう?」



「お前が怒るのも無理はないが…仕方ないのだ。今や大名家も派閥争いが激化している。うちは一族は我々一族に貢献している…。今や忍の頂点を極めつつあるのだからな…。我々一族と強力な絆を作ることができる。」




「お父様は忍を野蛮な者だと卑下していらしたのに……娘をそんな方々の下へ嫁に出すのですか…お父様は気まぐれな方なのね!」



あまりの腹立たしさに勢いに身をまかせて襖を開け部屋を出てしまった。
私は一日塗籠から出ず、引きこもっていた。

何故私が忍と婚儀を挙げなくてはいけないのかしら?あんな成り上がり者と婚約するなんて…
従姉妹達や御姉様達に何と言えばいいのか…。
第一、お父様は恥ずかしくないのかしら?
もう十分、御姉様達を大名家に嫁がせたから、末の私は余りもので都合がよかったから?他の大名家に笑われてしまうというのに…




あぁ…自分がこんな惨めな思いをするとは思いも寄らなかった…


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