第十八話
オレは暫くの間他の動物を狩って小夜が帰って来るのを待っていた。しかし、小夜はなかなか帰って来ないものだから、心配になり探しに行った。
すると、小夜が山道で倒れていた。
オレは小夜に駆け寄り、小夜の体を起こした。
顔を見てみると、泣きべそをかき、頬が泥まみれになっていた。
「どうした…?何かあったのか…?」
「……。」
すると、小夜は此方を見ては大きな目に涙を沢山溜めながらオレに抱きついた。
転んだだけで、こんなに泣くのかと心の中で笑ってしまったがオレは小夜を抱き上げて川岸に連れて行った。
川岸に連れて行くまでの間、小夜はオレの首に巻ついて離れなかった。今までにない行為にオレは戸惑いつつも、内心では嬉しくてしょうがなかった。
川岸に着き、大きな石の上に小夜を座らせた。まだ泣きべそをかいていて落ち込んでいるようだった。
オレは小夜の頬についた泥をとってやろうと、布を濡らしに行く。
そして、小夜の元に行き頬をふいてやった。
「……過保護な女だな…お前は…」
「……。」
オレは綺麗に小夜の頬を拭き終わり、小夜の隣に座った。
「……転んだぐらいで、そんなに泣くのか…」
「……」
「……痛かったのか?」
オレは横から小夜を抱いた。
すると珍しく小夜がオレにしがみつく。
「……どうしたんだ…急に……」
小夜は返答をせずオレにしがみついたままで、二人の間に沈黙が訪れる。
すると、小夜の腹が鳴った。
「……ごめんなさい…。みっともなかったわ。」
「腹が減ったのか?」
「……うん。」
「……では、昼飯にするか。そう言えば、あいつらは何処に行ったんだ?」
「私は知らないわよ…」
「……そうか。」
オレは小夜を置いて探しに行こうとすると、小夜が寂しそうな顔をしてオレの手をとる。
「……お願い……一人にしないで…」
オレはその姿を見て、思わず小夜を抱き締めた。小夜の体は少し震えていた。
あまりの愛しさに我を忘れてしまう…
「今日のお前はしおらしいな……普段からそうすれば良いものを…」
「……………うるさいわね!……ふん!離れてよ!暑苦しいわね…!」
そう言って小夜はオレから離れた。
さっきとは違い、やけに吹っ切れた顔をしていた。
あまりの機嫌の変わり様に少し驚く。
「……フン……だが、今晩は楽しみだな……」
「……あなた、いっつもそれね!……変な事しか考えられないの!?」
オレはまた小夜を抱き寄せ、顔を近づける。
「……子供…欲しくないのか?」
「いらないわ!あなたとの子供なんて考えられないわ!……離してよ!」
オレは嫌がる小夜に無理矢理口付けをしてやろうとすると、イズナと加代が此方に走ってやって来た。
「兄さん!ごめんね!オレ達、あっちの方に行ってたからさ!……………あっ…ごめんね…お取り込み中だった?」
オレは小夜を抱いたまま、立ち上がった。
腕の中で小夜が暴れているがオレは無視した。
「……小夜がな、飯を食いたいらしいんだ。いつもの丘に行くか?」
「いいよ!……姉さんってよっぽど兄さんに好かれてるんですね!早く二人の子供が見たいな!」
「…フン…直にできる……」
「……。」
小夜は妙に大人しくなって、俯いていた。
よく分からないが、オレは小夜の肩を抱きながら、丘に向かって歩き出した。