第十五話

戦は大勝利に終わった。
うちはの者達は浮かれて酒を嫌と言うほどに飲み干している。
かと言うオレも、皆と共に酒をたくさん飲んでいた。

今日の夕食はかなり盛り上がっている。
部屋中、酒の臭いが充満していた。

オレの隣にいる小夜は皆の様子を見て、怪訝な顔をした。



「小夜、お前も酒を飲め。」


「前にも言ったけど、私はお酒が飲めないの。」



小夜は酒の臭が嫌いなのか、着物の袖で鼻を摘まんでいた。



「……オレの酒が飲めないと言うのか」


「しつこいわね!私は飲めないの!」


「……オレがお前の年には既に飲んでいた。」


「それが何だって言うのよ?」



オレは小夜に詰め寄る。すると、小夜は余計に顔をしかめた。



「お酒臭いから、離れてよ!」


「……うるさい…」



オレは小夜を横から抱いた。
小夜は離れようと必死だ。



「皆の前よ!恥ずかしいわ!」


「……少しだけでも良いから、飲んでみろ。」



酒を飲んで気がまわらないのか、オレは小夜に酒を飲ませたくなった。小夜をより引き寄せ、無理矢理飲ませようと奮闘する。



「おい、飲め!……オレの酒が飲めないというのか!」


「やめて!……っ!……ごほっ!」



やっとの思いで小夜に酒を飲ませ、オレは優越感に浸った。
小夜はオレの腕の中で咳をしていた。

……本当に嫌いなんだな……

すると、小夜はオレを睨み付け、オレの顔を平手で打った。



「何するのよ!!無理矢理飲ませるなんて、ひどい!」


「……貴様……皆の前で…よくも……」


「あなたがいけないんでしょ!」



小夜はオレを突き飛ばし、部屋に戻って行ってしまった。
皆こちらを見ては、黙りこんでいた。

……恥ずかしいな。

オレは場を誤魔化すように酒を飲み干すと、一気に皆の笑い声が部屋中に響いた。



「小夜様は本当に気の強いお方だ!」


「マダラ様を平手打ちにして、ましてや突き飛ばすなど……なかなかのお方だ!」



皆は言いたい放題だった。普段なら許さないが、今日は特別な日だったからオレも笑って誤魔化した。



「姉さんも照れ屋さんだね。」


「……フン…まあな。」


「兄さんは本当に姉さんのこと好きなんだね。いつもちょっかいをかけては、怒られてるけど!」



イズナはオレに酒を注いでは笑っていた。



「明日、小夜と出かける約束をしているんだ。……鷹狩りをしようと思ってな。」


「そりゃ良い案だね!二人で行ってきなよ!」


「あぁ。そうする。」



オレは明日の事を考えると自然と笑みがこぼれた。
小夜の前で沢山の獣を狩ってやろうと意気込んでいた。



「……では、オレは小夜の部屋に行ってくる。」


「……分かったよ。程々にね!」


「……うるさい。」



オレは広間をあとにして、小夜の部屋に向かった。



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