第十二話


オレは日が暮れるまでイズナと修業をした。
最初は少し腕が鈍っていたが、修業を積むことで上達した。


そろそろ父上が偵察から帰ってくる頃だと思い、イズナに声をかける。


「イズナ、そろそろ帰るぞ!」


「そうだね、あっ!」


イズナは何かを見つけたらしい…


「兄さん、少し先に行ってて!」


「ああ。」


オレはイズナよりも先に家に帰った。
小夜も待っているに違いない…

オレは足の速度を速めて屋敷に向かった。




―――――





屋敷に着き、父上を探した。
中々見つからないなと思っていると、縁側で一人涼んでいる父上を見つけた。


「偵察の方はどうでしたか?」


「ああ、マダラか…。まあまあだ。今までの戦と何ら変わらないだろう……。」


「そうでしたか。」


父上は空を見上げてはぼぅとしていた。
いつもと様子が違うなと思い、尋ねてみた。


「父上、どうなされたのですか?」


「……マダラ、少し話がある……」


「……何でしょうか?」


「……お前、小夜さんを幸せにしてやれよ…。私は戦に明け暮れ、妻を蔑ろにしてしまった…今では一番悔やまれる。……あの時、優しくしておけば良かったとな……」


「……。」


「……それだけだ。少し独りにしてくれないか……」

「分かりました……。」


オレは少し心配になったが、父上を独りにしておいた。

…何があったのだろうか?

ふと嫌な予感がしたが、オレはそんなことはないと違う事を考えた。


……次の戦も勝たなくてはならないな。まあ、負けることなど有り得ないが……


オレは小夜の部屋に向かった。




――――――




小夜の部屋に着き、襖を開けようとすると加代との会話が聞こえた。


「……私、恋をしているのね!」


「はい!小夜様もやっと気付かれたのですね!良かったです!」


……小夜、やはりオレのことを…


オレは嬉しくなり、襖を開ける。
すると、小夜が驚いた表情をしていた。


「……今の会話…聞いてたの……?」


「何の話だ?オレは、さっぱり分からんが……」


オレはわざと言った。
すると、小夜は安心したような顔をしている。
加代が場を察したのか立ち上がって


「では、私は用事がありますので、失礼します!」


と言って去っていった。少し、小夜は戸惑った様子でそわそわしている。

……可愛い奴だな。本当に…


オレは小夜に近づき、抱き締める。
小夜は驚いた表情をしているが、オレは気にしない…


「……小夜、寂しかったか?」


「いいえ、寂しくなかったわ。加代と楽しく囲碁をしたり、物語を読んだりしていたから。」


まただな…小夜は照れているのか。
オレと性格が似ていて上手く言葉にできないのだな……


「ねえ、離して。暑苦しいわ。」


「また、照れたな…本当にお前はオレと似ている……」


小夜はくるっと顔を此方に向けては剣幕な顔をした。


「あなたと私が似ているですって!?変な事を言うのも大概にしなさいよ!」


「…小夜……」



オレは小夜の首に顔を埋めた。少し強張るものだから、余計に可愛く思えた。


「やめて!気持ち悪いわ!!」


小夜はオレを押し返すが、オレはより強く抱きしめ、小夜を押し倒した。


「……何をするの!?やめて!……あっ!」


オレは小夜の着物に片手を忍ばせる。


「夕食の前よ!!こんなことをしたら……また……!」

「ふん、夕食より前に早く済ませてやる……」


「そういう事じゃなくて……!」


オレは小夜の着物を脱がそうとすると……





「兄さん…!父さんが大変なんだ……!!」


イズナが無断で部屋に入ってきては大きな声で叫んだ。


「……どうした?」


「父さんが急に倒れて……」


「今そちらに向かう!」


オレは小夜を置いて父上の方へ向かった。




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