第二十話
私達は定食を食べ終わり、会計を済ませた。マダラ様は厠に行き、私は店の入り口の近くに置いてある椅子に座り、マダラ様を待っていた。

「小夜様、マダラ様とは、いつお知り合いになられたのですか?」

例の女中さんが私の元に慌ただしく駆け寄り、話しかけに来た。彼女はマダラ様がいないかどうかを確認した後、にやにやとした顔をして、私の言葉を待っている。

「……そう言われますと…数カ月前からですね…」
「そうなんですか!まぁ、マダラ様のあの御執心ぶりからすると婚儀を挙げるのも近いですね!」
「……。」

私は何と返答すればよいのか分からなかった。
私はあくまで身請けされた身だ。つまり、マダラ様の妾。元芸妓の私が忍一族の頭領であるマダラ様と釣り合うはずがない。きっとマダラ様は私のような者ではなく、ご立派な奥様をお持ちになり、婚儀を挙げるだろう……
そう思うと、私は胸をぎゅっと握り締めたような感覚になり、女中さんから顔を背けた。

「あっ!そう言えば、マダラ様の幼い頃の話、お聞きになりますか?」

女中さんは更に目を細め、口に手を添えて小声で話す。

「……はい…!私、実は知りたかったんです」

私は聞きたくなってしまい、その女中さんに便乗するように小声で話した。

「マダラ様の幼い頃は………」

私は女中さんから、マダラ様の幼い頃の話を聞いた。
その話から、マダラ様は今とは全く異なる性格をしていて、とても可愛らしい少年だったのだと感じた。悪戯好きで、快活な少年時代を過ごしたマダラ様。想像するだけで、思わず笑みが溢れてしまう。
女中さんと談笑をしていると、マダラ様が眉間に皺を寄せて此方に向かって歩いて来た。

「……おい、小夜に何か吹き込んだのか?」
「……いいえ、私は何にも申し上げていませんよ?」

女中さんは、すました顔で言った。

「……フン、そうか。……天ぷら上手かった。また来る」
「本当に美味しかったです。ありがとうございました。」

私は女中さんに一礼をした。

「いいえ、此方こそ!またのお越し、お待ちしております!」

女中さんの明るい声と共に見送られながら、私たちは店の外に出た。
大きな雪の結晶が空気に漂いながら降っていた。先程とは違って、すっかり雪が降り積もり、肌寒い。体を擦っていると、マダラ様が羽織の中に私を引き寄せて体を密接させた。

「……どうだ?暖かいだろう?」
「……はい。暖かいです…」

マダラ様は首を傾けて、私に優しく話し掛けた。その優しい表情に甘えて、私はマダラ様の腕に手を添えて体を近付けた。柔らかな温もりで私達の瞳は綻ぶ。

「番傘を買うか。確かこの辺りに…」

マダラ様は辺りを見回しながら、歩き始めた。一軒の店が目に入ると、そこには沢山の番傘が売っていた。私達はそこの店主に一番大きなものを頼んだ。

「小夜、これはどうだ?これで一緒に入れるぞ。」
「そうですね、私もこれが良いです。」

マダラ様は大きな傘を手に取り、私に見せた。

「お二人とも、お熱いねぇ。羨ましいよ、ハハハ!」

年のいった店主さんが私達を見てそう言うと、少し値引きをしてくれた。私達は買い終えて店を出ると、マダラ様が傘をさして私の肩を引き寄せた。そして、笑みを浮かべながら私の顔を窺い見る。

「さて、次はお前の着物だな。沢山買ってやるから、お前は好きな着物を選べ。」

私は申し訳なくなり、本当に良いのですか?と聞いた。

「ああ、構わん。あそこの店は、ここらで一番上等な店だ。行くぞ」

マダラ様に促されるままに私は歩いた。
雪が沢山降り積もっていたので歩き辛かったが、マダラ様は歩幅を縮め、私に合わせてくれた。さり気ない気遣いが益々マダラ様への愛しさを募らせる。マダラ様に手を引かれながら、一歩一歩、私は歩む。雪道に刻まれた私達の足跡。空から降ってくる新しい雪によって、その足跡は消えて行く。
「呉服屋」と書かれた小さな看板が見えた。看板が立てられた建物を見ると、立派な日本家屋で大分年季が入っているようだった。
私達は中に入ると、着物に付いた雪を払った。周囲を見渡してみると、美しい着物がガラス越しに掛けられていて、私は思わず見入ってしまった。壁に立て掛けられている大きな古時計の針の刻む音が響く。落ち着きのある静けさと共に、木の仄かな香りが漂っている。マダラ様は目の色を変えず、真っ直ぐに店の奥を見つめていた。

「マダラ様!お久し振りでございますね!……まぁ、こんなにご立派になられて…」

店の奥から着物を着た老女が現れ、マダラ様の元に駆け寄った。

「母の着付け以来か…?久し振りだな。今日はオレの隣にいる小夜の着物を買いに来た」

その老女は、この店の女将のようで、私をじっくりと下から上へと品定めをするように見つめて、大きな声で話し出す。

「初めまして、小夜様。マダラ様、普段着で宜しいですか?」
「ああ、一番上等な着物で頼む。」
「かしこまりました。では、小夜様どうぞこちらへ。」

女将は私を部屋に案内すると、近くにいる女中に着物を出すように命じる。

「では、お入りになって少しお待ち下さいませ。」
「はい、分かりました。」

そこはとても大きな部屋で、周りには綺麗な几帳や大きな鏡が沢山あった。絵巻物に出てくるような煌びやかな部屋に、私は思わず佇んでしまった。
部屋の真ん中に置かれている座蒲団の上に座って待っていると、女将と何人かの女中が沢山の綺麗な着物を持って部屋に入って来た。

「お待たせ致しました。すみませんが、鏡の前にお立ちになって下さいますか?」
「はい。……ここで良いんですよね?」

私は立ち上がって鏡の前に立つと、女将は私の足元に沢山の着物を並べ始めた。

「お好きな物を選んで下さいませ。こちらの着物は山吹色の落ち着いた雰囲気に仕上がっていて…」

女将は丁寧に一つ一つの着物を説明していた。
私は今まで見たことのない綺麗な着物に夢中になり、説明をしっかりと聞いていた。

「……私は…これが良いです。とても綺麗…」
「そちらですね、分かりました。では、一度ご試着をお願いします。」

女将はその着物を手に取り、広げる。私は女将に促され、几帳の後ろで着物を脱ぎ、一枚の肌着だけになった。

「失礼します。今、宜しいでしょうか?」
「はい。どうぞ…」

女将は着物を私の体型に合わせて、着物を私に着付ける。

「はい、長らくお待たせいたしました!どうぞ、鏡の前へ…」
「……はい…」

私は鏡の前へとゆっくりと歩み寄る。
そして顔を上げて自分の姿を見てみると、今までとは全く異なる自分の姿に感嘆してしまった。

「本当にお綺麗です、小夜様…マダラ様をお呼び致しましょうか?」
「…あっ……はい、お願いします…」

女将は部屋を出て、マダラ様の元へと向かった。
私が着ている着物は赤い布地に、沢山の花びらが描かれた美しい着物だった。描かれている桜の花弁がとても綺麗で印象的だったので、私はその着物を選んだ。
少しの間、私は鏡に映る自身の姿を見つめていると、廊下から足音が聞こえ、女将が襖越しに話し掛ける。

「……小夜様、マダラ様がいらっしゃいました。入っても宜しいでしょうか?」
「はい…大丈夫です。」

襖が開かれた瞬間、私は振り返ると、マダラ様が大きく目を見開いて私を見つめていた。

「小夜、綺麗だ…。本当に綺麗だ。嗚呼、何と言えばよいのか分からん…」
「ありがとうございます、マダラ様……」
「小夜……」

マダラ様は私を軽く抱き寄せると、周りにいる女将や他の女中さんが互いに顔を見合わせて驚いていたので、私は恥ずかしくなってしまった。

「……オレは気に入った。これにしろ、良いな。」
「はい、マダラ様……」
「だが、一枚だけではな…おい、他の着物はあるのか?」

マダラ様は女将に尋ねて、私に他の着物や帯等を着させた。しかし、結局は、どれも似合うと仰られて全部購入する事になった。

「では、マダラ様、これらを全てお買い上げになるということで宜しいでしょうか?」
「……ああ。直ぐに屋敷に届けろ。」
「お仕上がり次第、直ぐにお届けに参ります。……マダラ様、かなりのご執心ぶりですね、ふふ。」
「……うるさい!……オレはただ…」
「では、領収書を持って参りますので少々お待ち下さいませ。」

女将達は微笑みながら部屋から去った。部屋の中はマダラ様と私だけになった。マダラ様はその隙を狙ったかのように、私をぐっと引き寄せた。

「……お前は罪な女だ。オレにここまでの買い物をさせるとはな…」
「……マダラ様…すみません…」
「フッ、何を謝っているんだ?…お前は直ぐに冗談を鵜呑みにするからな…可愛い奴だ…」

マダラ様は私の顎を持ち上げたまま、小さく囁く。
私はそろそろ女将さんが来るのではないかと思い、マダラ様の胸を少し押した。

「……マダラ様、そろそろ離れないと…皆さんがやって来ますので…」
「……もう少しいいだろう?」
「マダラ様…また…そんなことを仰られては…」
「……小夜…」

マダラ様は私の首筋に顔を埋めては、軽く口付けをする。私はその行為の一つ一つに反応をして、体を強張らせた。マダラ様の柔らかい唇で次第に火照り出す。心の中から溢れ出る欲に負けぬよう、私は手を握りしめた。その時、マダラ様は私からすっと離れると、強張っていた私の手を取り、口元に寄せて軽く口付けをした。

「お前を見ていると、つい歯止めがきかなくてな……」
「マダラ様…」

私とマダラ様は互いに見つめ合っていると、女将が襖越しに「失礼します」と言って領収書を持って部屋に入って来た。

「お待たせ致しました。これが領収書です。」
「ああ、すまないな。」

マダラ様は領収書を受け取ると、襖を開けて店の出口へと向かった。女将達は私達の背後に連なるようについて来くると、私達が出口に着いた時に、一斉に一礼をした。私も礼をし終えると、マダラ様は私の手を握り、店の外に出た。
この頃には既に雪がやみ、夕暮れ時だった。

「……小夜、帰るか。」
「……はい…」

真紅の光芒を残して夕日が山の垣間に消えて行く。夜の訪れを告げるように、鉛色の空が紫色へと変わり、夕闇が辺りを覆う。
今日という一日が終わる。その瞬間を見届ける時、私は昔からいつも寂しく、悲しい気持ちになった。私だけがこの世界から取り残されるような気がしてならなかったのだ。
私は自らマダラ様の手を握りしめると、マダラ様は少し驚いたようで、「どうかしたか」と聞いた。私は首を振り、「大丈夫です」と言い、偽りの笑みを浮かべていた。

***


私達が屋敷に着いた時には、すっかり辺りは暗くなっており、太陽に変わって月が大地を照らしていた。
屋敷の正門を通ると、マダラ様の周りには沢山のうちはの者達集まった。

「マダラ様、お帰りなさいませ!」
「どこに行かれてたのですか?」

集まっていたのは、うちはのくの一ばかりで、私を一瞥しては嫌な顔をしていた。
それもその筈で、私のような者が一族の長であるマダラ様と釣り合うわけもなく、彼女達からしてみれば、私は厄介者以外他ならないのだ。現実の世界に一気に引き戻された感覚になり、心の中に陰りが生じる。
私は顔を俯かせていると、マダラ様は私を引き寄せて玄関へと向かった。

「お帰り、兄さんと……小夜さん」
「ああ、イズナか」

玄関で出迎えていたのはイズナ様だった。
俯かせていた顔を上げてみると、イズナ様が私をじっと見つめている。マダラ様と同じく、澄んだ黒い瞳を持つイズナ様。その瞳に見つめられると、いつもどう反応して良いのか分からなくなってしまう。その瞳に吸い込まれる度に、まるで迷路に迷い込んだ感覚になり、イズナ様の考えが全く読めなかった。

「夕食、もうすぐできるよ。」
「分かった。オレは小夜の部屋で休んでから、そちらに向かう。」
「うん、分かった」

私はマダラ様に肩を抱かれながら玄関を上がると、イズナ様が私を見つめて、ふっと口元の端を緩ませて笑った様に見えた。不思議な空気が私達の間を漂う。
私はイズナ様に軽く一礼をして、マダラ様と共に部屋に向かった。
屋敷の廊下を暫く歩いた所に、小さな扉があった。その扉を開けると小さな渡殿があり、更にその先には、庵のような小さな離れがあった。
私はマダラ様に手を引かれて、ゆっくりと歩く。
渡殿を渡り終えると、マダラ様は襖を開けて私を部屋へと誘導する。

「……ここがお前の部屋だ。」

マダラ様は障子を開けて、庭園を私に見せる。眼前には沢山のサザンカや椿が咲いていた。雪と花の調和が美しい。銀白色に彩られた景色が花によって華やかな色合いになる。
部屋の内部にも目を配らせると、黒塗りの格式高い調度品が並べられていた。今までにない贅沢な生活を送ることになるのかと思うと、マダラ様に申し訳なく思えた。
私はマダラ様のもとに歩み寄り、正座をして一礼をする。

「……マダラ様、ありがとうございます。私のような者に、このような素晴らしいお部屋を…」

マダラ様は膝を降りかがむと、私の肩に手を置いた。

「一々礼をするな。お前は遠慮し過ぎだ」
「マダラ様…」
「少し寒いな。火鉢に火を灯すか」

マダラ様は火鉢に炭を入れ火を灯すと、羽織の中に私を引き寄せた。私はマダラ様に甘えるようにして、マダラ様の体に触れる。

「……暖かい…」
「……そうだな…」

揺らめく橙色の火の光。その光を包むように手を差し伸べば、マダラ様が私の手にそっと重ねる。マダラ様の顔を見れば、マダラ様も同じように私を見つめている。視線を結び合わせて、互いの瞳に笑みが宿る。
あたたかく、優しい。マダラ様が愛おしい。

「小夜、お前に伝えたいことがある」
「何でしょうか、マダラ様…」

マダラ様は私の手を握ると、不安そうな表情を浮かべた。

「小夜…これから先、戦や何やらでオレは忙しくなる事が多くなる。すまないが、オレが来るまで此所で待っていてくれないか?外に出ると、お前が…その…色んな事に巻き込まれるのではないかと、心配でな…」
「はい。マダラ様がお渡りになるまで、この部屋で待っております。心配なさらないで下さいませ」
「だが、ずっと此所にいるのはつまらんだろう?だから、お前に書物を買っておいた」

マダラ様は立ち上がって近くにある棚から書物を取り出すと、私の前で丁をめくる。

「これは面白いぞ。ここに置いてあるものはオレが気に入ったものばかりだ」
「……マダラ様…ありがとうございます」

私はマダラ様の手に触れて、一丁ずつめくられていく書物を垣間見た。そこには難しそうな文字が沢山書かれていて、私には到底読めないような物だった。その実、私は文字をまともに読むことや書くことが出来なかった。生まれてから、誰かに文字を教わったことは一度もなかった。教わるといっても、昔、町にある店の看板に書かれた文字を、兄や楼にいた姉さん達に尋ねては覚える程度だったので、私が認識できる文字は限られている。
教養以前に何も取り柄がない女だと思われるかもしれないが、私はマダラ様に正直に申し上げる事に決めた。

「……マダラ様…あの…」
「どうした?」

マダラ様は書物を片手に、私を引き寄せた。とても言い辛かったが、マダラ様の目を見て決意を固める。

「私は文字を書くことや読むことすら出来ません……大変申し訳ないのですが、その書物を読むことが出来ないのです……」

私は震えそうになる手を抑えようと、一所懸命にマダラ様に告げた。文字すら読めない女だと知ったマダラ様は、私をどう思われるのだろうか。少しの間、マダラ様を見つめていると、マダラ様は眉を下げ気味にして目を少し見開きながら

「そうなのか?では、オレが教えてやる」

と、意気揚々と私に言った。予想していた反応とは全く異なる様子だったので、私は動揺してしまった。

「……そ、そんな…申し訳ないです…」
「いや、オレがこの部屋に来たときはしっかり教えてやる。後で、文机と筆と和紙を女中に持ってこさせよう」
「マダラ様…ありがとうございます…!」

私は嬉しくなり、自然と笑みが溢れた。マダラ様は字の読めない私を蔑むのではなく、一から教えようと親身になって下さっている。身請けだけではなく、美しい着物や装飾品、この立派な御部屋を与えて下さった上に、文字まで教わることになった――マダラ様は誠にお優しい御方。身に余る程の愛情を限りなく注いで下さる。その優しさや愛情に応えるためにも、文字をしっかりと覚えていこうと心に決めた。

「これから先、何もかも正直に言え。寂しくなったら、寂しいと正直に言うんだ…良いな」
「はい、マダラ様…」

マダラ様は書物を畳の上に置くと、口元に僅かな隙間が生じた。徐々に縮まる互いの瞳。火鉢に灯された火の明かりによって、マダラ様の顔は左半ばだけ浮き出ている。

「……小夜…」

マダラ様が私の腰に手を回し、身体を引き寄せようとした瞬間。襖越しに誰かの足音が聞こえたので、私達は現実世界へと引き戻されたように身体が硬直した。マダラ様は目の色を変えず、襖の方へと目線を配り、「誰だ」と言った。

「ヒカクです。マダラ様、夕食の準備が整いました」
「……そうか、もうそんな時間か」

マダラ様は再び私の方へと目線を移すと、先程とは異なって表情に陰りが生じる。

「……すまないが、今日は此所で夕食をとってくれ。後で女中に食事を此所に運ぶよう命じておく」
「はい、マダラ様。ご心配なさらなくても良いのですよ。私は大丈夫ですから……」

心苦しそうで、哀しげなマダラ様の瞳が揺らいでいる。マダラ様を不安にさせてしまっているのだろう。私はマダラ様の頬に手を添えた。

「小夜……」

マダラ様は私の手を握ると、自身の頬に、より強く私の掌を押し付けた。ずっと繋がっていたい。口には出せないが、その思いが手を通じて私の心に響いてくる。

「マダラ様、イズナ様や長老達も既にいらっしゃいますから…」

ヒカクさんは焦っているのか、マダラ様を急かし始めた。

「マダラ様…そろそろ、広間にいらっしゃらないと……」
「小夜……」

マダラ様は私を抱き寄せると、直ぐに帰ってくる、と耳許で囁いた。私はマダラ様の胸の中で小さく頷き、はい、と返事をする。そして、ヒカクさんと共に広間へと向かうマダラ様を見送った。

マダラ様は正直に仰られなかったが、やはり私を、皆の前で出すのは気が引けたのだろう。
私はマダラ様の妻ではない……
先程のうちはの人々の視線から感じたように、私は場違いな人間なのだ。忍でもなく、マダラ様の妻でも恋人でもない。彼らから見れば、私はただの愛人。これから、様々な嫌がらせや差別、諍いに巻き込まれてもおかしくはない。芸妓に身を落とした私に課せられた定めなのだと、自分自身に言い聞かせた。

しかし、私はどんなに辛い定めが待ち受けていようとも、マダラ様のお側にいられるなら十分幸せだと感じた。
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