最初のトキメキ



駅の下でギターを弾いて歌っている男の人がいた。
その男の人は凄い美声で、私は聞き惚れてしまい、遠い所から彼を見つめていた。



………カッコいい!!



白髪に、耳にはピアスをつけて首にはカッコいいネックレスをしていた。しかも、凄くスタイルが良くて惚れ惚れしていると何人かの女の人が小さな箱にお金を入れていた。

私は、すっかりファンになってしまい、女の人達につられて箱に三千円札を入れてしまった。 食費を削ってもいいから、彼に貢ぎたいと思い、沢山入れてしまった。

よく見ると、近くには彼のCDが売られていたので、私は手に取って眺めていると…



「買うのか?」



と、その男の人に尋ねられてしまった。私は余りの嬉しさに「はい!是非!」と言って、買ってしまった。間近で見ると、ますますカッコいいので私は不躾ながらに、そのCDにサインをしてもらった。

…扉間さん……か…



私は胸をときめかせながら、あのオンボロアパートに向かった。




暗い夜道を歩いていると、一人の男が片手にビールを持ってフラフラと歩いていた。
私は酔っぱらいと関わりたくないので、早足で歩いていると…



「おい、吉崎!!」



と、聞き覚えのある声がしたので、振り返ってみると、いきなり抱き付かれてしまった。



「止めて!!何するの!?」

「くそっ!!今日も当たらなかった!!何故だ!?」



よく見ると、隣に住んでいるマダラさんだった。右手に缶ビールを持って、左手には馬券を沢山抱えていた。



「あの…離れて下さい!しかも、お酒臭いです!」


「フン…もう、いい…。オレはもう…ダメなんだ…」


マダラさんは何故か拗ねているので、私は彼を引き摺りながらアパートへと向かった。





アパートに着くと、目の前には柱間さんと見知らぬ男の人が話し合っていた。



「兄さん…!!」



その男の人はマダラさんに駆け寄ると、私に何度も謝罪をし始める。



「すみません!!ご迷惑をおかけしました!!」


「あっ…大丈夫です。それより…マダラさんが大変な事になっているので…」

「吉崎さん、すまないな!おっと、イズナにはまだ紹介してなかったな、今日から千手荘に住み始めた絢香さんだ!」



柱間さんは私を紹介すると、イズナさんは私に一礼をして自己紹介を始める。



「はじめまして!うちはイズナと申します。家庭教師をしています!あっ…ちなみにオレは柱間さんの隣に住んでいるので!宜しくお願いします!」


「イズナはな、マダラの弟でな…マダラが仕事をしないでフラついているから、イズナは一所懸命に働いて兄を支えておるのだ……」



柱間さんは、イズナさんについて語り始めると、いきなり泣き始めた。
私はこんなにキャラが濃い住民達を見て、これからの自分の生活に不安を感じた。




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