壁ドン


今日は大学の講義がなかったから、家でゴロゴロしながら恋愛ドラマを見ていた。


『……〇〇、オレはお前が好きだ!』

『……〇〇君、私も貴方が好き!』


とか言って、若手俳優が流行りの壁ドンを披露していた。

はぁ、私も扉間さんに壁ドンとかされてみたいな…と思いつつ、ポテチをくちゃくちゃと食べながら、そのドラマを見ていると…



……ドンドン!



「……?」


今、隣の部屋から壁を叩く音が聞こえたんだけど…


すると、隣の部屋(例のマダラさんの部屋)からテレビの物凄い雑音が聞こえ、ドラマの台詞が聞こえくなってしまった。


五月蝿いな…なんなの…?

しかも、競馬中継を見ているからか競馬解説者さんの声が物凄く響いている。

余りにも五月蝿いから、私も対抗するようにテレビの音量を上げると、また隣の部屋から壁をドンドン叩く音が聞こえた。


「おい、五月蝿いぞ!テレビの音量下げろ!(ドンドン!)」


「そっちこそ、五月蝿いです!我儘言わないで下さい!(ドンドン!)」


私達が壁越しに言い争いをしていると、頭上からはらはらと木の粉のようなものが落ちてきた…


もしかして…これ、やばいんじゃ…

私は壁が倒壊してしまうのではと思い、一旦壁を叩くのを止めてみると…


……ドーン!



マダラさんの渾身の一撃(ただ、壁を叩いただけ)で壁にポッカリと穴があいてしまった。

私の目の前には、煙草を咥えながら片手に缶ビールを持ったマダラさんがいた。



「……ヤバい…ですよね…?これ…早く、柱間さんに言わなくちゃ『それは絶対に言うな!!』」



人が通れそうな程に大きな円形の穴があいているというのに、この人は「このままにしろ、いいな!」と呑気な事を言っていた。



「いや、駄目ですよね!?柱間さんに早く言って…修理してもらわないと…」


「そんな事をぬかせば、借金が増えるだけだ!絶対に言うなよ」



それが原因か…

やっぱりお金の事が原因なのね…


私は呆れかえっていると、マダラさんは穴から顔を半分出して、私の部屋をじっと見つめていた。


「フン…年頃の女とは思えん程に地味な部屋だな」


「ちょっと…覗かないで下さい!あっ…!そうだ!この布で穴を隠してっと…」


「何をしている?」


「防犯のためです…」


「フン…誰が貴様のような貧相な女を覗き見ると?自意識過剰にも程がある」

「なっ…!」


「全く、醜い女程上せあがるからな…困ったものだ」

「五月蝿い!!!とにかく、覗くな!!」



私は布を壁にたらし、穴を隠し終えると、この先の行く末を案じていた。


……はぁ…どうしよう…

これから穴があいた状態で、マダラさんと過ごすことになるのかと思うと不安で仕方がなかった…。


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