突然の訪問者2


「パパ!!起きて!!朝だよ!」



結はベッドの上に座り、マダラの耳元で思いっきり叫ぶ。
すると、マダラは眉間に皺を寄せながら結を見る。



「耳元で叫ぶな…朝からうるさい…オレは疲れているんだ…」


「パパのベッドって大きいんだね!ベッドだけじゃなくて、部屋も大きいけど!」



マダラは結に背を向けるようにして寝返りをうつ。
すると、結は物足りないのかマダラの体を揺する。



「起きてよ!!わたし、つまんないよ!遊んでよ!!」

「………。」


「おーーきーーてーー!!」


「………うるさい!あっちに行ってろ!」



マダラは結をベッドの上から無理矢理降ろした。
結は負けじとベッドの上に乗り、マダラの体の上に思いっきり乗っかる。



「パパーーー!!」


「…………うるさい!!しつこいぞ!」



マダラは結を振り落とし、またぐっすりと眠る。
結は観念したのか、マダラの部屋から去っていき、色んな部屋を見て回る。



「パパは一人暮らしなのに、こんなに部屋があるんだぁ」



結は目新しい光景を目にして、好奇心のあまりに思わず独り言を呟く。
すると、結はある部屋に入り、近くにある棚を物色し始める。


どうやらアルバムらしき物を見つけて、結は自分の父親の過去に興味を抱き、アルバムを見始める。



「パパの昔ってどんな風なんだろ…」



すると、マダラと似たような顔立ちをした青年の写真を見つけた。
ページをめくってみると、その青年はいつもマダラの隣に写っていた。



「……パパもかっこいいけど、このお兄さんもかっこいいなぁ」



あるページに、その青年がバイオリンを持って、表彰状を手にしている写真があった。
その写真の隣には「イズナ、大会にて優勝」と書かれていた。



「……イズナ?パパの友達なのかな…」



すると、隣のページにはイズナと厳つい顔をした男の写真があった。
その男の顔には大きなバツ印がマジックで書かれていてよく見えない…
その写真の隣には「扉間死ね」と書かれていた。
結は漢字が読めないので、頭を傾げる。



「……何て書いてあるんだろ?パパに聞こ!!」



結はマダラの部屋へと向かい、アルバムを持ってベッドに乗る



「パパ!!これ、何て読むの?」


「……また…お前か…静かにしろと何度も…」



すると、アルバムを目にしたマダラはカッと目を見開き、結からアルバムを奪う。



「……勝手に漁るな」


「ねえ、さっきの文字何て読むの?教えてよ」


「……お前は知らなくていい」


「イズナって人はパパの友達?」


「………色々と見たな…」

「うん!パパは昔もかっこいいんだね!イズナって人もかっこよかったけど!」



マダラはベッドから降りて、アルバムをしまいに行く。



「待ってよ!パパ!!教えてよ!」


「うるさい!お前は知らなくていいんだ」



マダラは自分が書いた言葉を娘に見られたくなかったのだ。
そして、棚にアルバムをしまい取手に鍵をかける。



「これじゃ、見れないよ!」


「見なくていい!………ああ…ガキは五月蝿くて堪らんな」



マダラは頭を抱えながらリビングに向かう。
結も父親の後を追いながら懸命についていく。

マダラは冷蔵庫からハムやらチーズを取り出し、パンと共に机の上に並べる。

結はイスの上に座り、ワクワクしながら待っていた。



「パパの朝ごはんってオシャレなのね!こんなの初めて!」


「……。」



マダラは葉巻を取り出し吹かし始める。
すると、結が顔をしかめて手で鼻をつまむ



「臭い!!パパ、吸うの止めてよ!!」


「我慢しろ」


「くーーーさーーーいーー!!!」


「……朝から大声を出すな!……ハァ…」



マダラは渋々葉巻を吸うのを止める。
そして、ワインを持ってイスの上に座る。



「これがバターだ。さっさと食え」


「はーい」



結はパンを取り、トースターの中に入れる。
一方マダラは自分だけ高級なフランスパンを手にして、チーズを塗りワインと共に食していた



「なんか…パパのパン…わたしと違う…」


「お前のようなガキにはコンビニで売ってるようなパンで十分だろう…」


「ひどいよ!わたしだってそれがいい!!」


「………。」



マダラは無視をして、パンを食べ始める。
すると結がマダラの方をじっと見つめ続ける。
チラッと見ると、目元の辺りがマダラにそっくりで本当に自分の娘なのではないかと思ってしまう。
結に見つめられ続けて、マダラは観念したのか自分のパンを少し分け与える。



「……お前には無理だろうがな」


「大丈夫だもん!……………んっ…かたい…」


「……ほらみろ」



結は負けじとパンを噛み砕き、飲み込んだ。

負けず嫌いな性格もそっくりで、マダラは思わず目を背けてしまう。



――――ピンポーン



急にインターホンが鳴り、マダラは誰が訪れてきたのか小さなスクリーンを見てみると、一人の少女が立っていた。


なんだと思い、ボタンを押して応対する。



「……誰だ」


「……その声は…パパね!!会いたかったの!ねぇ、どうやったらここに入れるの?迎えに来てよ!パパ!」


「……」



マダラはまた同じような小娘が来たのかと驚き、思わずスクリーンを切ってしまった。



「……パパ…どうしたの?」


「………お前らグルか?」

「……?」


「……ハァ…」



マダラは結があの娘と仲間ではないことが分かり、渋々、あの少女を迎えに玄関まで歩く。



「どこに行くの?」


「…お前はそこにいろ」


「……?……はーい…」



結は戻ってイスの上に座り、パンを食べ始める。
マダラはドアを閉めて、あの娘を迎えにエレベーターで一階まで下り、玄関に行く



「パパ!!会いたかった!!」



その娘は大きなリュックを背負いながら、マダラに抱き付く。

マダラはその娘を無理矢理引き剥がし、話し掛ける。



「……お前はオレの娘ではない!さっさと帰れ!」


「……そう言うと思って、ちゃーんと証拠を持ってきたんだから」



少女はリュックを下ろし、何かを取り出そうとした瞬間、マダラは嫌な予感がして少女の手をとり、自宅へと誘導する。



「……ここで見せるな。部屋で開けろ。」


「はーい」



マダラはその少女と共にエレベーターに乗り、自宅へと向かう。


その少女は結よりも少し年上のように見えた。


自宅に着き、扉を開けると結が走ってマダラに抱き付く。



「パパ!!おかえりなさい!!早かったね!………誰?その子は…?」


「こんにちは…パパ…もう一人子供いたんだ…」


「……うるさい!……結、オレの部屋にいろ。オレは少し話があるのでな。」


「やだ!!パパと離れたくない!」



結はマダラに思いっきりしがみついているので、マダラは渋々結を抱いてリビングに向かう。


「ここに座れ。」


「はい。………パパの部屋って大きいのね…ホテルみたい…」



少女はソファーの上に座り、リュックを横に置く。

マダラは首に巻き付いて離れない結を抱きながら、その少女に話し掛ける。



「……証拠を見せろ」


「あっ!そうよね!忘れてたわ!………えっと…確か……この辺りに……」



少女はリュックを漁り始める。

すると、鍵と沢山の封筒を取り出しマダラに差し出す。



「………その鍵は…もしや!?」


「ママが持っていたパパの部屋の合鍵よ!
ママが言ってたんだけど、パパは気に入った女の人には合鍵を渡して、いつでも部屋に入れるようにしてたって言ってたわ!」



マダラは少女に恥ずかしい過去をばらされて、顔を背ける。

そして封筒の中身を取り出し、内容を見る。




――――拝啓、うちはマダラ様


この子は私と貴方の子供です。
私は癌でこの先、生きることは出来ません。
しかも、この子は貴方以外に身寄りがいません。
ですから、父親としてこの子を育ててください。


DNA鑑定書も添付してあります。
疑うのならば、それを見てください。
それに書かれている事は全て本物です。
現実から目を背けないでくださいね




と、一つの手紙に書かれていた。

マダラは頭を抱え、少女を見つめる。


やはり顔を見てみると、自分と顔立ちが似ているので自分の娘ではないかと思ってしまう。



「……嘘だ…これは何かの間違いだ…」


「じゃあ、でぃーえぬえー鑑定してみる?」


「するわけないだろう!!」



マダラは溜め息をつき、娘に話し掛ける。



「……名前はなんだ……?」


「鈴っていうの!今年で12さいになるわ」


「………大人しくするなら、住まわせてやる…」


「やったぁ!!私ね、パパに捨てられたらどうしようかと悩んでたのよ!ああ良かった!」



鈴は部屋中を駆け回り、大騒ぎしていた。
一方、結はマダラの腕の中でぐっすりと寝ていた。



そんな娘たちを横目に見ながら、マダラはまた途方に暮れたのだった。



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