束縛な彼




「私ね……最近、悩みが多くて困ってるの」


「そうか。お前の悩みは大体分かる」



私が柱間様に書類を届けに行くと、火影室で幼馴染みである扉間に出会い、立ち話をしていた。



「大体、こうして私達が話していると……」



――バンッ!



すると、いきなり火影室の扉が豪快に開かれ、私達はその扉の方に目線を変えると、やはり……例の人物が竹の物差しを持って、私達の間に割り込んできた。



「おい、これはどういう事だ? ナマエから一メートル以上、離れろと言った筈だろ」



例の人物…いや、マダラさんが私達の間の距離を物差しで測り、「97.25pだ」とか言いながら、私を扉間から遠ざけてマダラさんは私を抱き締める。



「何度も言っただろう? 扉間から離れろと」


「…………。」



―これが私の悩みだ。

私は千手一族であるが、忍の才は無に等しく、雑務が唯一の取り柄である超平凡な、ごく普通の人間だ。
こんな私が何故かマダラさんに好かれてしまい、告白(?)されてからマダラさんと真剣に交際するようになった。
と、ここまで聞けば、「羨ましい」と思う人は多いと思う。私も付き合う前は格好良くて、クールで、しかも、忍一と謳われているマダラ様と付き合えるなんてと胸を高鳴らせていたけれど、いざ、交際してみれば、マダラさんは私を束縛するようになり、正直な所、最近は鬱陶しく感じるようになってしまった。
最初は、「他の男とあまり喋るな」とか「夜遅くに家に帰るな」程度だったのが、最近では「オレ以外の男と絶対に話すな(嫉妬に満ちた目)」やら、「おい、何処に行っていた? 今まで待っていたんだぞ(私の家の玄関で何故か待っている)」など、だんだんエスカレートしているのだ。



「マダラ、しつこい男は嫌われるぞ」


「うるさい、貴様は黙っていろ」


「マダラさん、あの……苦しいです……」



マダラさんが私を強く抱き締めていたので、私は半分窒息しかけてしまった。(多分、マダラさんは無意識)
そして、マダラさんは「すまん、お前が余りにも華奢なものでな」とか言って私の頭を撫でる。



「本当にお前が心配だ」


「扉間……」


「おい、扉間と話すな」



扉間は哀れむような顔で私を見つめては、マダラさんを少し睨んでいた。


「大体、何故オレを『マダラさん』と呼ぶ? いい加減に名前呼びで構わんぞ」

「……なんか慣れません」

「なんだと? お前にとって、オレは恋人の筈だろう?」



マダラさんは大きな声で恥ずかしい事をぬけぬけと話すので、私はみるみるうちに顔が赤くなってしまった。本当に見かけは格好いい人なんだけど、中身が少し残念というか、いや、別に愛されて嫌と言うわけじゃないけど、愛が重すぎるのよね……。



「フン、そんな事はどうでも良い。実はな、今日はお前に大事な用を伝えに此所にやって来たのだ」


「……そうなんですか?」


聞いて驚くなよと言わんばかりの表情を浮かべたマダラさんを見て、私は嫌な予感がした。
このマダラさんのドヤ顔はただ事ではないだろう。



「オレと一緒に住め」



やっぱり、とんでもない事を言い始めた。まだ結婚もしていないというのに、同棲とか絶対に無理だ。



「嫌です、第一……『安心しろ、お前の家にあった物は全て、我が屋敷にある』……」



ひえぇぇ…。
まさかの、まさかですか。
マダラさん、いつの間にそんな事をしたんだ!?
第一、私の許可なしで、そんな事をするだなんて……。

そう考えれば、考える程に私は次第に怒りが込み上げた。私の意思に関係なく、物事を進めるとはいくらなんでも許せないと思ったからだ。況して、同棲となると尚更だ。


「どうだ? このオレと一つ屋根の下で共に暮らせるのだ。嬉しいだろう?」

「……いい加減に……」


「ナマエ、どうした? 素直に言ってみろ」


「……いい加減にしろーっ!!!」



―バシィッ!!!


私はマダラさんの頬を平手で思いきり叩くと、ドアを思いきり開けて、部屋から飛び出した。

ああ、もう嫌だ。
あそこまで束縛されるだなんて!


すると、私が懸命に走っていると、マダラさんが猛スピードで走って私を追いかけていた。
まさか、ついてくるとは思ってもいなかったから、私は驚いていたが、マダラさんに追い付かれぬよう懸命に道を走っていた。



「ナマエ!! 何故、オレから逃げる!? お前はオレを愛していると言った筈だ!!」


「そんな恥ずかしい事、大声で言わないでください!!! しかも、愛しているとは言ってません!! 好きとは言いましたけど……!」

「同じ意味じゃないか!!」



私達は町の中を走っていたので、里の人達は私達を好奇の目で見ていた。それもその筈で、かの有名な、うちはマダラ様が猛スピードで女を追いかけ回しているのだから。
そういえば、私、案外こんなに早く走れるんだ。マダラさんに追い付かれないとか凄いと我ながらに自惚れてしまった。



「おぉ! ナマエとマダラではないか! 二人で仲良く追いかけっこか?」



私が懸命に走っていると、柱間様が私達に手を振って笑っていらっしゃった。どうやら、日課の散歩をしていらっしゃるようだが、私は構わず、柱間様の背中に隠れた。



「柱間様! 助けて下さい!」


「おお、どうした? マダラと喧嘩でもしたのか?」

「柱間ァァ! ナマエから離れろ!!」



マダラさんは私と柱間様の元に駆け寄ると、いかにも襲い掛かりそうな厳めしい顔で柱間様を睨み付けていた。一方、柱間様は私達の様子を見ては豪快に笑って、「昼間から仲睦まじいな! 羨ましいぞ」と、呑気な事を仰っている。



「柱間様、聞いて下さい! マダラさんが無理矢理私を……」


「同棲の何処が悪い!? オレ達は恋人同士じゃないか」


「……待て待て。二人とも落ち着け。オレはさっぱり状況が掴めていないぞ。屋敷に行って、話さぬか?」



……ということで、私とマダラさんは柱間さんに連れられて、屋敷に到着した。
柱間様の大きな御部屋に通された私とマダラさんは、それぞれの座布団に座り、柱間さんを目の前にして話合いを始めた。そして、私は今までの事を柱間様に話して、マダラさんの束縛がいかに凄いのかを伝えた。



「……成る程、それでマダラの頬を叩き、今に至ると言うわけだな」



と、柱間様はマダラさんの赤く腫れ上がった頬を見ては笑っていらっしゃった。



「フン、ナマエの平手打ちは、オレへの愛の証だ。」



いいだろう?と言わんばかりの自慢気な顔を柱間様に向けた。



「ナマエも大変ぞ。噂に聞いていたが、マダラがここまでナマエに執着していたとはな……」


「……まさか、結婚もしていないのに同棲は…ちょっと、というか、かなり引きました。」


「だな。マダラ、ナマエの気持ちを考えろ」


「何故だ!? オレはナマエと共に過ごしたいだけだ」



はぁ、と私と柱間様は溜め息をついた。
何度もマダラさんに同棲は嫌だと伝えても、ずっと、この調子だから私は諦めかけていた。



「ナマエ、いっそのことマダラと暮らしてみたらどうだ?」


「えぇ!? だって、私達はまだ結婚していませんよ?」


「そうだが……マダラがこれ程までナマエを想っている様子を見るとな……」


「何を躊躇っている? オレと住みたくはないのか」

「いや、だって……マダラさんと同棲したら……やっぱり、その…」



同棲したら、やっぱり、大人の階段を上るわけだから……と頭の中で色々と巡らすと、私は次第に頬が赤くなり、二人からを背けてしまった。すると、マダラさんが私の腰に腕を回すと、体を密接させて、耳元で囁き始めた。



「……まぁ、お前が期待しているような事もあるだろうな?」


「……!!」



私は頬が茹で蛸のように赤くして、マダラさんの体を押し返した。この人が柱間様を目の前に平気で、あんな事を話すものだから私は恥ずかしくなってしまった。



「マダラ、ナマエを蔑ろにしたら許さないぞ」


「フン、要らぬ世話をするな。なぁ、ナマエ?」


「し、知らないです!!」



私はマダラさんから顔を背けて、畳を見つめると、いきなりマダラさんが私の体を抱き上げて、視界が一気に変わってしまった。もしや、このまま強制的に屋敷に連れて行くのだろうかと嫌な予感がして、体を捩らせるが、マダラはしっかり私を抱いているので、全く抵抗が出来なかった。



「ちょっと……マダラさん! 離してください!」


「柱間の許可も得たのだ。今日からオレの屋敷に住め」


「えぇっ……!?」



マダラさんは柱間様の屋敷を飛び出すと、うちは一族の邸宅へと私を抱きながら向かってしまった。


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