MISCHIATO




慌ただしく今日も、一人の少年に魅せられてしまった哀れな亡者共は真っすぐ…イタリアエリア・オルフェウスの宿舎へと走っていく。

その姿は流星を追う…否、流星を狙う彗星だ。


そんな必死な彼らを前に、同じく少年に魅せられてしまっているだが…暢気にも、私はゆっくりと己のペースで彼の元へと向かう。



宿舎に着けば…嫌でも耳に響く複数の男達の声、それはもう各国の様々な者達で…

そしてあの亡者達の中央に居るのは知らずの内に彼らを虜にしてしまった…イタリアの白い流星、フィディオ・アルデナ。

そして、まだ秘密だが私…エドガー・バルチナスの世界一愛しい恋人である。

フィディオは俺のだと勝手な事を言い怒り狂う馬鹿共の前を素通りし、中央で訳の分からない喧嘩に挟まれて困惑するフィディオの手を引き、救出する。

「フィディオ、」
「エドガー…!!」

暗かった彼の表情は私を見るなり、パアッと明るくなって…助かったと言わんばかりにフィディオは懐に飛び込んできた。

そんな彼の行動が愛らしくて暢気にも可愛い…と思いながら、頭を撫でてやりぎゅっと抱きしめてあげる。

「大丈夫か?」
「う、うん…皆、オルフェウスの宿舎に来るなりいきなり喧嘩を始めて…」

彼らを心配そうに、暴力に発展しないかと冷や冷やしながら…見つめるフィディオ。

「エドガー、どうしよう」
「放っておきなさい。その内、我に返るだろう」
「え…でも……」

握ったままのフィディオの手を引き、私は彼らに悟られないようにオルフェウスの宿舎を出る。

力では全く敵わない事はフィディオも承知済みのため、抵抗はしないが…背後で不安げに私の名を呼ぶ。

「エドガー…」
「気に、掛けるな」

余程彼らが気になっているのだろう…自身が喧嘩の火種だとも知らずに、本当に純粋な子だ。

「エドガー…!」
「…それとも、フィディオは私と居るより彼らの傍らで醜い争いを見たいのかい?」
「ち、ちが…うけど、皆…大丈夫、かなって」

本当、本当…に、純粋な子。

本当は迷惑なはずだというのにそれでも彼らの身を案じ、本気で心配する事が出来る。


真っ白で、優しい子だ。

こんな純白で純粋な子を、私は自分色に汚く染めていくのかと、ふと…思う。


色に例えるならば…ジャパンの円堂は赤、アメリカのマークは橙、アルゼンチンのテレスは紫、コトアールのロココは円堂と少し違った紅…そして私は碧だろうか。

汚い争いを言い変えてみるなら、彼らは色様々な絵の具で…フィディオという真っ白なキャンバスを自分色に染めたいと、思っている。

……勿論、私も含めて。


しかし、フィディオは私のモノなのだから…彼らが彼を染めるなんて事は皆無だ、私が私以外の者にフィディオを渡す訳がない。

考えるだけ無駄だったという話だが…やはり何事にも自覚は必要だという訳だ。


「エドガー…?」

問うても何も答えない私を心配したのだろうか…間を少しつめて、近い距離でフィディオが見上げている。

「っ!」
「どうしたの?」
「いや…ただ、フィディオが可愛いなと思っただけだよ」

そう言った直後、ボンッ!!と小さく爆発が起こったような音が響き…フィディオは顔を林檎のように真っ赤に染めていた。

もう…本当に、どこもかしこも可愛らしい。

「っエ…ドガッ、もう!」
「フフッ本当に可愛いよ、君は。…さぁ、フィディオ…少し歩こうか」
「っ…うん」

手を差し延べ、お姫様のように彼の手を拝借し…フィディオの歩幅に合わせたペースで歩き始める。

そんな私の行為にフィディオは恥ずかしげに俯く。

「もう…恥ずかしいよ」
「でも恥ずかしい今だから私の事だけで頭がいっぱいだろう?」
「う…うん」

肯定はするがまだ顔を俯いたままのフィディオ…耳までも真っ赤に染まっているから、相当恥ずかしいらしい。

しつこいようだが、本当に…可愛い子だよ、フィディオは。



しかし、ここで逆に私が、フィディオに。

「エドガー、キス…したいよ」
「っ!!」

驚かせられた。

純白無垢な子が…まさか彼の口からそんな言葉を聞かされる日がこんなにも早く来ようとは、思わなかったのだ。

「フィ、フィディオ…」
「駄目…かなっ?」

不安そうに、けれども真っ直ぐに私を見つめるフィディオ。

そして、ふと目に付く私を見上げるフィディオの蒼い瞳。

宝石のサファイアも上回る美しい輝きを持ち、海のように深く、澄んだ瞳。

ここでようやく気付かされる。


先程私は、フィディオは純白だから何も描かれていない真っ白なキャンバスだと例えたのだが、しかし…実際は違った。

フィディオもきちんと色がある…私と似て異なる、蒼が。

よく考えたら真っ白なんて何もないだけではないか…私は何を勘違いしていたんだか、我ながら恥ずかしいものだ。

そうと気付いたならば…訂正とお詫びを、何も知らないが、フィディオにしてあげなければと思う。

きちんと返事を返す事も然り。



「勿論、良いに決まっているだろう…むしろ私がしたいくらいだよ」
「ほ、本当?」
「ああ」

繋いだ手を引き寄せ、彼の体を抱き抱えるように腰に手を回す。

そっと顎を持ち上げて、お互いの顔がどんどんと近くなり…頬をほんのりと桜色に染めるフィディオは、目を閉じる。



こんな大事な時だというのに、私は再度思う。

本当は、未来という真っ白なキャンバスに連れ合う二人を合わせた色を染めていくのものなのだ、と。

私とフィディオは碧と蒼…同じような色でも、私と彼を混ぜ合わせた色ならばきっと宇宙…いや、銀河の空色を上回る程の美しいあおとなるに違いないだろう。



私はそう気付かせてくれたフィディオに…愛を込めて、そっと口を落とした。





END



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フィディオ受け企画様【MISCHIATO】に提出させていただきました。

恐れ多くもタイトルの…お題を選択させていただきました。
私、死ぬべきだ…。

そして毎度のごとく内容がgdgdで申し訳ありません…
お題がMISCHIATO(混ぜ合わせ)だったので絵の具とか色関係を想像しながら執筆させていただきました。

こんなのを提出していいのかという不安もありますが、世界のフィディオ受け好き様に喜んでいただけたらなと思います…!
主催者様、素敵な参加させていただきましてありがとうございました。

最後に、フィディオ受け万歳!!!

ここまで読んで下さり感謝します。
ありがとうございました!!
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