馴れ初め | ナノ






Side:静雄

初めて会ったときから、好きだった。

どんなに性格が悪くてもどんなに相手から嫌われていても、俺が嫌いになることはできなかった。それどころかどんどん引き寄せられて、毎日喧嘩しかしていないのに顔を見るたび好きになっていく。喧嘩することでしか名前を呼ぶ口実もないし、会うこともできない当時はそう思っていた。

その“好き”は一向に減ることがなく積もる一方で、思いを告げることなく初めて会った日からもうずいぶんと時間がたった。学生のころほど頻繁に顔を合わせることはなくなったがそれでもあいつの姿を見るだけで体は勝手に反応し、条件反射のように今でも会うたびに殺し合いのような喧嘩の繰り返しだ。高校生のころよりは身長も伸びて、お互い社会に出て新しい人間関係を築いているというのにこの関係だけは何年も変わらず、この先もずっと続いていくのだろうとぼんやりと思っていた。




Side:臨也

シズちゃんだけは最初から違っていた。

その化け物じみた力だとか、大型トラックにぶつかっても致命傷を負うことのない強靭な体だとか普通の人間とはかけ離れた身体能力を持っていることは噂で聞いていたし、その時点でオレの知りうる平均的な人間とは違うということは認識していた。
しかし、会ってみてはじめて思ったのはそうした能力による人間との違いではなく、他の人間と平和島静雄という人間がオレにとって本質的に違うということだった。

中学の時に知り合った新羅や高校で仲良くなったドタチンも全人類を平等に愛するオレにとってはある種特別な存在であると言えるかもしれない。けれどシズちゃんだけは初めて会ったその瞬間から明らかに違っていた。髪の色とか関係なしにまぶしく見えて、近づきたいと思う一方で初めて感じるその感情が怖くてシズちゃんに近づくことができなかった。
それ以来、シズちゃんに自分を見てもらいたい一心で様々な方法で喧嘩を仕掛けたし、大人になった現在でも今までのオレの嫌がらせの成果からか、池袋に足を踏み入れるだけで自販機が飛んでくる。自分を見つけてくれて、構ってくれる。どんな形にせよそれがとにかく嬉しくて仕方なくてオレはまた池袋に足を運んだ。




20110531



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