才能の悲劇たち
外見が秀でる事は、変えにくいから羨望の値が増える。自分の顔は嫌いじゃないけれど、それなりにコンプレックスを抱えている。つまり学園のマドンナの前の席のあの子は正直、羨ましくて疎ましい。
「寿也は、どんな子が好き?」
「授業中雑談しない子。」
野球推薦で来たのにトップクラスの成績を維持する彼は言い揃えるに、学園のプリンス。私にみせる毒は中学からの付き合いや諸々の腐れ縁事情から出てきたもので、他の場所では人当たりが大変いい。寿也は視線を一度もこちらに向けないで、ひたすらに問題を解き進める。
「かわいい子?」
「うん。」
「そっか…。」
「でも花子は僕の彼女だよ。なんでそんな事聞くの?」
「私に一番は無いから。」
「たしかに。」
「あっ!」
私は寿也を殴るふりをする。ふっと寿也が私のあげた手を握りしめて、すきと口をぱくぱくさせて、いたずらな目つきになる。
「僕の一番なんだからいいじゃない。」
野球に振り回されているはずなのに、そんな矛盾でさえも気にならない程余裕はなくなっていた。
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