言えないところ



「やっぱ、花子のケツいいな。」
「なにおっさんみたいな事を…。」

大河は、茂野の発言に素知らぬ振りをしてる様に見せ掛ける為に、手にもったボールを苦手の変化球の形に持ち替えて投げる。見事に田代先輩のミットを大きく動かしたをみて、動揺の振れ幅が広くなる。

「田代先輩、1人で練習します。ありがとうございました。」

なんて真っ正面からの表情に自信が無くなったのを隠して、そう言う。屋上の狭いグラウンドで密度が濃い上に、「美保が手伝ってってー。」なんてしばしば花子は短いスカートで現れるだから飢えた聖秀高校野球部員は、性欲を垣間見せる。

「花子先輩。」
「あ、変化球下手になったの?」
「ちょっといいッスか。」
「あー、拭き終わるまで待って。」

程よく肉の付いた脚が折り込まれた事で、スカートは上擦り、太ももがたわわになっている。そんなので上目遣いをしてくるのだから、思わず固唾を飲み込む。
薄いワイシャツは汗で透明度が増して、キャミソールの肩掛けに隠れずに見えた白のレース。

「終わり!話しとは。」
「ここじゃなんなんで。」屋上の出入り口を開けて、花子先輩を誘導する。暑い金属のドアノブをつかむ手を裏側のドアノブに持ち替える。じんわりと汗ばむ手がひやりとしたドアノブしみていく。

ガチャンと錆びた音が混ざりながら、閉まる。すると聞き慣れた金属や皮の音などが遠くなり、別世界の錯覚がする。

「…先輩、スカート短すぎ。」
「えっ?」
「野球部なんて、飢えた奴らしかいないんだから。襲われたりしたら、どうすんの。」
「えー、偏見だよ。」
「俺は嫌、見られるのも。」
「どうして?」
「見られたいの?」
「…別に。」

釈然としない態度がもどかしくて、花子先輩の太ももをつまむ。

「痛っ。」
「膝上5センチ。」
「?」
「までしか、許さない。」

花子先輩は、俺の言えない所に気付いたのか、下唇を噛みながらはにかむ。ほっと息を落とし掛けた時に、おでこに汗がぐしゃりとする感触。そしてすぐ目の前には花子先輩、彼女の両手は俺の頬をしかりと押さえていた。背伸びをして当たりに来たため、帽子が床に落ちる。

「大河だって、毎日毎日そんなかっこいい顔見せてるよ。」
「…はっ…?!」

近さの緊張から、声がうわずる。

「本当は鈴木さんとだって、話してほしくないの。」
「でもあいつは、マネージャー…」
「でもなの!」
「…」

「学年違うし、こんな格好いいし…不安なんだけど?」
「先輩も、」
「一緒だよ。水飲んでる唇とか、意外とひろい肩とか、筋肉とか、脱いだ時の肩胛骨とか、全部狼藉の原因なんだよ。」

単語を指し示すように、頬にあった手をするすると動かしていく。指先が首筋をひんやりと通り、心臓がどうにかしてしまいそうになる。

「マネージャーのバーターでもいいから、目の届く所にいたいし。」

そう言うと、ユニフォームをぎゅっと掴んで頭を胸に擦るように付けると、「心臓、うるさいね。」なんてつぶやく。
すっかり花子先輩のペースにされているのに、どうにも反撃する余裕がない。せめてもと腰に手を添えると、茂野先輩の一言が頭にこだまする。

理性なしに、そろそろと降ろして触れたそれは予想以上に柔くて、浮かび始めていた選択肢がぶっ飛んだ。






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