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テニス部、2年。山田花子です!好きなことは友達と遊ぶ事。特技?だから意外とあたしテニス推薦なんだってば。最近ハマっている事は、寮の同じ部屋の子とのおしゃべりかな。彼氏…募集欄?そんなのいらないって!うん、わざわざ体育棟までありがとねー!また遊ぼう!カラオケとか!

二年生の佐藤寿也です。野球部で捕手をやってます。…好きな事?は、野球です。え?好きな食べ物?…甘い物とか好きかな。特技…も、ほんとにつまらない奴でごめん、野球。ああ、こんなので記事になるかな?三宅の方が多趣味だし話題豊富だから、三宅呼んで来ようか?いいの…?ごめん。彼女は、いないです。…うん、ほんとうにごめんなさい。いつも新聞たのしみにしてるよ。ありがとう、またね。



「こりゃ、俺が佐藤に推薦されても断られただけあるで。かーっ!」
「写真の撮り方がアイドル雑誌でも見てる気分だぜ。」

後日、下駄箱の掲示板に貼られた校内新聞は運動部の王子様、お姫様特集だった。取材前はそんな事を言っていなかったので、きちんとこれからは何の記事か聞くことにしよう。

「みんなも順番で回ってくるさ。」「いやー、やっぱり可愛いよな!」
「ああ。廊下ですれ違っても運動部とは思えない程、垢抜けてるんやで!」
「誰のはなし?」
「テニス部の、二年生のプリンセスや。」

同じ新聞の僕の下にある記事。テニスウェアに身をくるんでテニスラケットを口の前に置いてはにかむ写真と共に彼女の紹介文が載せられていた。

山田 花子…。

あっと思ったが、頭の中で彼女の名前がぐるぐるとまわっていた。

「ほら!花子、可愛く撮れてるでしょ?」
「えっ!写真大きすぎない?本当に新聞部って…もう。」

「噂をすれば…。」

三宅が僕の肩を叩く。
写真とは違って、肩まで髪の毛が伸びていて白く長い手にはゴムが付いている。身長は運動をしているだけあって、160後半あるだろう。しかしそれに割りが合わない程に小さい顔、ひざは周りの子よりこぶしひとつぶん程高いのだ。誰かが小さく呟いた。王子様とお姫様のご対面と。

それから、彼女の顔をふとした時に思い出してしまい、普通科の校舎にいる時は後ろ姿でもいいからと探す様になった。

「佐藤くん。」
「あ、はい!」

自主練習中、早乙女監督に呼ばれる。

「これ部長会のプリント。来週までに目を通しておいてね。」

部長を引き継いだとはいえ、何も部長らしくまとめる事がない野球部の部長としての仕事はこれが初めてかもしれない。よろしくねと言い残して、早乙女監督は戻っていく。

プリントに目を落とすと、彼女の名前が書いてあった。しかも席は隣り、運が回ってきたという他にあるかと思い、よっしゃと叫びたい気持ちを抑えて鞄にプリントをしまう。折れ目がつかないように丁寧に。


部長会議当日。

「佐藤くんだよね?」
「そうだけど。」
「よかった、じゃあ私はここの席だ。」
「山田さん。」
「は、はい!」
「…だよね?」
「うん、うん!」

目をぱちくりとさせる彼女に視線が泳ぐ。夏が近づいて、熱気なのか頭をくらくらさせるけどそれが今は凄く心地がいい。名前の分からない感情が全身をめぐって、部長会議なんて右から左だ。

彼女は平成のプリンセスに違いない。









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