じゅわじゅわと気持ちいい音を立てて油の中を泳ぐお肉を見つめる。そろそろかなあ、と思ったタイミングで玄関のドアが開く音が聞こえてきて、一度火を止め彼の元へと向かった。

「ろしょくん、おかえり!今日もおつかれさま」
「ただいま。ありがとう。ん、ええにおいする」
「今日は唐揚げで〜す!」

ええやん、と目を伏せて笑う盧笙くんの鞄とスーツの上着を受け取る。手洗いうがいをしている間にスーツをかけて台所へ戻った。せっかくの休日だったので手作りでプリンもつくったのだが、それはサプライズって事にしておこう。ご飯を用意しようとお茶碗を取れば着替えを済ませた盧笙くんにそれを取られる。ふたりぶんのご飯をよそって机に並べ終えて台所に戻ってきた盧笙くんにお礼を言う。既に盛り付けておいたサラダを冷蔵庫から取り出している間に、揚がったばかりの唐揚げをぱくり、つまみ食いする姿が見えた。

「あー!つまみぐい!」
「あっつ、うま、いやあっつ」
「お行儀悪いことしないの!」

はいはい、と頭を撫でて返事をした盧笙くんにはいは一回!と抗議の声を上げる。そのまま頬を親指と人差し指でむにゅりとつままれ、拗ねた目線を送れば喉で笑われた。サラダのお皿も唐揚げのお皿も運んでくれた盧笙くんにはぐらかされたような気分になりながら、いつもの定位置、君の向かい側の幸福に座る。

「いただきます」「召し上がれ!」

昨日の残りの煮物もあるんだった、と食べる前に立ち上がりタッパーを持ってきて机に置く。もぐもぐと食べながら「うまい」とどんな日も必ず言ってくれる盧笙くんは優しい。お皿は洗ってくれるし、準備は手伝ってくれるし、料理は褒めてくれる。格好良くて優しい自慢の彼氏だ。

「えへへ、おいし?」
「うまい。いつ何食ってもお前が作るんは全部うまいな」
「え〜!好き!」
「なんやねん。俺も好きやけど」

軽く笑いながら好きを返してくれる。彼のこういうところが好きなのだ。私のどんな行動も言葉も決して聞き流すことをせず、全て見つけて掬って拾って、真摯に返してくれる。絶対に嘘はつかないし、ありがとうもごめんねもちゃんと目を見て言ってくれる。

「ごはんおかわりあるよ」
「ん、もらうわ」
「はーい!」
「いや、ええよ。自分で持ってくるからなまえは座っとき」

さり気なく私のコップも一緒に持って行って、お茶を注いで帰ってきてくれる。ありがとう、と受け取ればどういたしまして、と返ってくる。世間一般的に言えば当たり前の日常であるのかもしれないが、私にはこれが泣いてしまえる程嬉しい。好きな人が自分のことを好きで、生活を共にしているというどうしようもない現実。

あっという間に空になったお皿とお茶碗を見てにこにこしていれば、ご馳走様、と彼の声が聞こえてそれに続く。私が立ち上がるより先に食器をまとめて台所へ持って行ってくれた彼の後ろに続き、ちょいちょいと手招きをして一緒に冷蔵庫を覗き込んだ。

「みて、プリンつくったの」
「まじか、やば、めっちゃ嬉しいねんけど」
「お風呂あがったらいっしょに食べよ!」
「あ〜〜〜なまえほんまかわええな、ありがとうな」

ぎゅうう、と抱きしめてくれた盧笙くんに自分もハグを返す。耳元で彼の吐息が笑うから、くすぐったくて、嬉しくて、私もつられて笑った。今日もお疲れ様、大好き、いつもありがとう。そういう気持ちを込めて抱きしめていれば、ピーピーと冷蔵庫が音を立てる。それに二人で笑って、冷蔵庫を閉めて、洗い物をしながら今日の出来事を報告し合う。世界で一番素敵な人の隣に並んでいられることの幸福に、今日も感謝しながら眠るのだろう。

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