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 あれからしばらくして、サトシが亡くなったという知らせが届いた。
 サトシからの手紙だった。


『今、俺は幸せだよ。』


 そんな書き出しから始まる手紙は別れの手紙なんかではなかった。サトシが最期に俺に宛てたラブレターだ。


 今、俺は幸せだよ。明日を生きる理由を持っているから。どれだけ辛くても、隆さんが俺を待っていてくれている。そう思うだけで、心は喜びで満たされるんだ。

 でもね、隆さん。隆さんがこれを読んでるってことは、俺はもういないってこと。
 約束を守れなくて、ごめんね。もう待たなくていいんだよ。隆さん、ありがとう。
 隆さんと過ごした日々は1ヶ月にも満たない短いものだったけど、宝物がたくさんできた。
 隆さんが買ってくれたお箸。俺、入院してからも使ってるよ。
 隆さんと一緒に海で拾ったガラスや貝殻。病室に飾ってるんだ。
 お揃いの指輪。ゲームするのに邪魔だから、ペンダントヘッドにした。ごめんね。
 俺が作ったご飯が美味しいって食べてくれたこと。
 隆さんが笑ってくれたこと。泣いてくれたこと。
 全部忘れない。

 本当はね、もっと伝えたいことがあるんだけど、隆さんに言いたいこといっぱいあるんだけど、やめとく。
 書けば書くほど、未練たらしくなるからさ。

 ただ、これだけは伝えておきたいんだ。
 どうか、あの部屋で俺と暮らした日々を忘れないで下さい。笑ってる俺を覚えていて下さい。
 どうか、幸せになって下さい。

 大好きでした。ずっと、ずっと大好きだった。
 隆さん、俺と出会ってくれてありがとう。好きになってくれて、ありがとう。
 本当に幸せだよ。
 隆さん、ありがとう。

 さようなら。


 手紙は、大切にしまっている。
 何度も読んでボロボロで、俺の涙でヨレヨレだけど、大切にしまっている。

 手紙が届いてから、8年が経った。


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