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「お前、欲しがってただろ。たまに俺がしてるシルバーの指輪。金属アレルギーだっつーから、それをやることはできねーけど、まぁ、ツテ頼って作ってもらったんだ。金属アレルギーでもできるように医療用金属で同じようなやつ」
「俺のために? わざわざ?」
「いらねーっつーんならやらねー」
なかなか受け取ろうとしないプレゼントの小箱を、俺はひょいと取り、また上着のポケットに戻そうとした。
「え! いる! いるよ! いるいる!!」
「大事にするか?」
「する! しますっ!」
「よし、じゃあやる」
サトシが嬉しそうに小箱を開ける。右手の中指にはめようとしたがかなりぶかぶかだった。
「……隆さーん……」
「まじか。お前って指細いのな」
「指輪できないじゃん」
「すぐに指くれぇ太くなんだろ。まだ16なんだしよ。退院したらメシ食って太れ」
「ちぇー……」
「あーもー、悪かったよ! 親指にでもしてろよ」
「……わかった」
むくれたサトシの顔から目を逸らし、ふと時計を見ると面会時間の終わりが近づいていた。
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