09




「俺ってさ、すっげー幸せ者だね」


 俺は号泣しているというのに、笑うサトシ。


「生きていてほしいと願ってくれる人がいるんだ。俺にも」

「……たりめーだろ」

「嬉しい。幸せだな、俺」


 本当に幸せそうに笑うサトシ。自分が泣いているのが恥ずかしくなった俺は、ゴシゴシと顔を拭った。


「移植、するよ。受けてみる。……本当は聞いたときから受けるつもりだったんだけど、隆さんが泣いてくれたから、すごく勇気がでたし、頑張るよ」

「……泣いたことに触れんな」

「嬉しかった」

「俺も、移植受けてくれるのは嬉しいけどな。泣いたのは忘れろ」

「忘れないよ。ねぇ、隆さん。移植が終わって退院するまで、会いに来ないでくれる?」

「……は?」

「隆さんに見られたくないんだ。そういうの、色々とさ」


 言いたいことは分かる。辛そうな姿を見られたくないということだろう。俺も気を使わずにいる自信はなかった。


「絶対にうちに帰ってくるって約束するなら、いいぞ。待ってる」

「うん。約束する」

「合カギ、なくしてねーだろうな? また外にいるの拾うとか嫌だぞ。ちゃんとメシ作って俺が帰んの待ってろよ?」

「うん、分かった」

「よし」


 俺はコートのポケットから小さな箱を取り出して、布団の上に転がした。


「なに?」

「プレゼント」


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