08
そのまま何も言わずに布団を敷き、寝る体勢になるサトシ。
「お前、何言ってんだよ?」
「……俺、明日出てくから。彼女だが元カノだか知んないけど、連絡すればいいじゃん」
初めて聞く、冷たいサトシの声。俺が知っているサトシはいつも、笑ってるか拗ねてるかのどちらかだった。サトシは怒っているというのに、知らないサトシを知れたことを嬉しく思うのは不謹慎だろうか。
「麻希のことはどうでもいいけど、お前、出てくってどういうことだよ?」
「邪魔だから」
「邪魔な訳ねぇだろ。お前分かってんのか? 俺はお前に惚れてんだぞ」
そう言うと初めてサトシが俺を見た。嬉しそうな顔をするとばかり思っていたが、サトシは今にも辛くて泣きそうな顔をしていた。
「どうしたよ? 言ってみ?」
「……今晩だけ、一緒に寝てもいい?」
「明日も明後日もいいぞ。お前フロは?」
「……まだ」
「じゃあ入ってこい」
「うん」
サトシがフロに入っている間に、サトシの布団を畳んだ。
もう俺のベッドで一緒に寝るしかねぇぞ。そういう状況を作ってしまわなければ、決心が鈍りそうな気がした。
痛いのか。痛いんだろうな、そりゃ痛いよな……。郁巳め……ビビらせやがって。
サトシと入れ替わりでフロに入った。いつも長ブロの俺が、さらに長時間入っていた。何でかって? 身体を隅々まで何回も洗うためだよ。
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