07




 結局、郁巳の門限までにサトシは帰って来なかった。


「会いたかったけどしゃーねーか! 帰んないと怒られちゃうし」


 いや、怒られるから帰るってお前。16歳よりも早く帰る28歳とかどうよ、マジで。

 タクシーを呼び、郁巳が乗るところまで見送った。


「あ、そうそう! 麻希先輩にちゃんと連絡しろよー? たぶんやり直したいんだよ。お前、一方的に別れたんだろ?」

「麻希がそう言ってたのか?」

「あ、いやっ! そうじゃねーけどー、そうかなぁってさ! あはっ」

「嘘下手すぎ。まぁ、連絡はするから」

「あははー。頼むわ、じゃあな!」


 タクシーの運転手に自宅マンションの住所を伝え、郁巳は帰って行った。
 郁巳が帰ってから1時間ほど経っても、サトシは帰ってこない。いい加減心配になり、辺りを探しに行くことにした。


「つってもよー、どこを探せばいいのか全く分かんねー」


 とにかく靴を履き、玄関のドアを開けた。すると、ドアのすぐそばにしゃがみ込んでいるサトシがいた。


「うぉ! どうした? 鍵忘れて出てったのか?」


 いや? でも俺が帰った時、確か鍵掛かってたよな……?


「ま、いいや。さっさと入れよ。メシ食ったか?」

「うん」

「そーか。じゃあ、お前へのお土産は明日だな。美味い焼き鳥と焼おにぎりがあるんだ」

「ふーん。じゃあ、俺はもう必要ないよね」

「……あん?」

「おいしいご飯が食べられるなら、俺はいなくてもいいじゃん」


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