06
「久し振りだなー! 隆んち! まだこのボロアパートに住んでんだな」
「ボロって言うな。住めば都だ」
「大学入った時から謎だったんだよなー。実家近いのに何でわざわざこんなとこで一人暮らししてんの?」
実家はまぁ上流とまではいかないが、まぁまぁ金のある方で、事業をやってる父親は俺に跡を継がせるつもりだった。
でも俺は父親の跡を継くことなんかに全く興味がなく、大学も親が勧めたところには行かなかった。そのせいで、勘当されてボロアパートに入居したというわけだ。
「一人暮らしの方が何かと楽だろ」
「同棲したりとか?」
「まぁな」
「同棲と言えばさー、麻希先輩が連絡ほしいって言ってたぜ」
大将が作ってくれたお土産とコンビニで買った酒を広げながら、何気なく言う郁巳。一応付き合ってる奴と一緒に住んでる部屋で、昔の彼女の名前って言われたくないもんだな。
やましいことはないし、サトシもいないけど、なんとなく居心地が悪い。
「なんで同棲と言えばで麻希が出てくんだよ」
「してなかったっけ?」
「してねぇよ。で? 連絡してって、麻希になんかあったのか?」
「知らねーけど、ほしいって言ってた」
「ふーん。つーか、サトシ遅いな」
あいつ、何時に帰るとか言ってたっけか。心配させんなよな。
「10時には俺帰らないと兄貴に怒られるから、それまでに帰ってきたらいいなー」
「門限がある28歳ってどうよ」
あの人、束縛しすぎだろ。
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