06
「すごい。俺も綺麗なの探す!」
今度は下を向いてフラフラと歩き始めるサトシ。俺の手をしっかりと掴んでいる。前を見るのは任せた、とでもいう感じだ。
どのくらい、そうやってサトシと歩いていたのだろうか。車を停めた辺りからあまり離れないように、波打ち際を何往復かしたが、海に飽きないサトシを見るのに飽きなかった俺は、ずっとそのまま歩いていた。
サトシのポケットがいっぱいになるまで。
「腹減った。メシ食い行くぞ」
「うん!」
俺たちは車を置いたまま、昼食を食べられる所を探して歩いた。ちなみに手は繋いでなかった。
久しぶりに食べたサトシ以外の人間が作ったメシは、なんだか味気なく感じた。
昼食を食べたあと、また海に戻り、今度は砂浜に座った。
「外食って初めてだよね。ごちそうさまでした」
「俺は、やっぱりお前の作ったメシがいいわ。お前がずっとうちにいてくれりゃあいいのにな」
「……ご飯のためだけに?」
サトシの表情は、見るからに寂しそうな顔だった。
「そんなマジに取るなよ。まぁなんつーか、お前のメシは美味いって話だよ」
俺のフォローには何も反応せず、少しの間沈黙が続いた。マズイことを言ってしまったのかと俺が頭を悩ませていると、サトシが先に口を開いた。
「……ねぇ、隆さん。俺、隆さんが好き。……好きなんだ」
サトシは抱えた膝に頭を埋めて、そう呟いた。
「どういう意味でだ?」
俺は、サトシが何て答えるか何となく分かっていた。
そして、その通りに答えてほしいと思う自分が、サトシをどう思っているか、この時初めて自覚した。
「……恋、だよ……」
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