03




「隆さん、早くっ!」

「ちょっと待てって。ゆっくり行っても海は逃げねぇよ」


 翌日、今朝もサトシが作った美味いメシを味わって食べる俺。家庭料理というのはどうしてこう素晴らしいのか。……美味い。


「ここからじゃ海遠いじゃん。俺いっぱい見たいんだよっ」

「……しゃーねー。サトシ、ラップして冷蔵庫。帰ったら食うから」

「わかった!」

「さーて歯みがき……っと」


 なんだって海くらいでこんなにハシャいでんだか。ガキか。……あ、ガキか。


「隆さん、早く!」

「あん? お前早いな」


 ほんとに『嫁に来い』って言いたいくらいだぜ。口の中が泡だらけの俺の背中をユサユサ揺さぶってくるサトシを鏡越しに見ながら思った。

 サトシに急かされながら愛車に乗り込み、海に向かって走り出した。
 一番近い海まで高速に乗って1時間半くらい。今はまだ朝の8時。何時間、泳げもしない海にいるつもりだ。


「なんか隆さん、日に日にご飯食べるの遅くなってない?」

「あん? そんなのはお前が作るメシが美味いのが悪い」


 照れているサトシ。


「俺の嫁さんになるか?」

「……へ?」


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