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大きなデパートに併設されたホームセンターの駐車場に車を停め、並んで歩く。日曜の昼間なだけあって、人はかなり多い。
俺たちが歩いていると、見つめたり、振り返る女性が少なくない。
自分で言うのもなんだが、俺は割と女性にモテる方だ。180センチ手前ほどの身長で、まぁ顔は整った方だし。若い頃は、それこそバレンタインの日には友達に羨ましがられたもんだ。今は決まった女性がいると思われて、義理しかもらえないけど。
一緒にいるサトシも、俺には及ばないが、背はまぁまぁあるし、フワフワした猫っ毛はサトシの幼さをいい具合に引き立てているし、爽やかさも感じる。
まぁ、男前2人ってことだ。行き先はホームセンターだけど。
「これでいいだろ」
俺が選んだのは掛け布団と敷き布団と枕がセットになった値段もお手頃な綿布団。横にあったお安いシーツも一緒に。歯ブラシと茶碗と箸も買って、アパートに帰った。
レジのおばさんに『優しいお兄ちゃんでいいわねぇ』と子供扱いされたサトシは少しむくれていた。
「とりあえず短い付き合いだろうけど、同居するんだから一応約束事は決めとこうぜ」
「ごはんは俺」
「洗濯は俺がやる」
「それも俺がするよ。掃除もする」
「マジで? じゃ、頼むわ。ラッキー! あとは、ま、1Kでプライバシーもへったくれもないか。とにかく仲良くしようぜ」
「うん」
こうしてお互いを知らない俺たちの同居生活が始まった。すぐに終わるとは分かっていた。ただの家出少年なんだから。
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