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柏原は掴んだ腕を捻り上げた。徐々に加えられる力が強められていき、苦しむ男子高生は苦悶の声をあげる。
「ぐぁ……あ゙ぁ゙っ」
「ここじゃあ喧嘩なんざ日常茶飯事だ。俺の生徒が2階から落とされたなんだと騒ぐ気はねぇ。俺が言いてぇことはたった1つだ。てめぇが喰ったメシ代と窓の修理費置いてさっさと消えろ。……痛い目に遭いたくなきゃな」
「わ……分かったから! いくらだ! 払うから放してくれ! 腕が折れる……!」
「ハイジ。修理費、いくら出した?」
「あー、5万だったかなあー?」
「嘘だ! ふざけんな!」
「残念だけどー、割ったのは君だから仕方ないよねー」
「誰が5万も払うかよ!」
「あーもーうるせぇうるせぇ。2万にしといてやるからさっさと帰れ」
柏原が手を離すと、男子高生はしぶしぶポケットから1万円札を2枚出した。それを乱暴にテーブルにたたき付けて教室から出て行った。
「せんせーのせーで3万損したー! ガラスの修理に1万取られるのにー」
「うるせぇ。それでも1万儲かっただろうが。これで売り上げ1位が見えてきたぜ」
どう贔屓目に見ても、かつあげ以外の何物でもないが、この1万円のおかげか、1年C組は見事、卒業祭売り上げ1位となり、豪華景品が後日贈られることとなった。
しかし、お話はまだ続く。
売り上げ順位が発表されて大盛り上がりの1年C組。カフェに見立てた教室内の片付けも楽しげにやっている。
ところが、その中に灰司はいない。柏原によって化学準備室に連れていかれたのだ。目的は、もちろん女装を解くため。……だけではない。
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