05




「…………」


 げんなり。
 その一言で表せる灰司の姿は、女性の浴衣を身につけ、髪を黒く染められてウィッグと共に結われ、女性のようにメイクを施されていた。普段ジャラジャラ付けているピアスは、耳たぶに1つずつに抑えられている。
 はっきり言って、綺麗である。


「おー! 可愛いじゃん! ハイジ!」

「うるせーよー。俺はこんなん着るつもりじゃなかったのにさー」

「いや、お前マジ可愛いって!」


 マッチが灰司のウィッグに触ろうとした所で制止がかかった。


「馬鹿野郎! 俺様がどれだけ時間をかけて作り上げた姿だと思ってんだ。触るな」

「そういやハイジだけはすげー時間かかってたっけか」

「その通り。お前はさっさと呼び込み行け! 客連れて来るまで帰ってくんなよ。分かってんな?」

「はいはい! わっかりましたよー」


 自作の立て看板を手にマッチは教室から出て行った。教室の中はもうコスプレ喫茶として十分に機能するまでに準備が整っていた。
 あとは客を待つのみである。


「ハイジ、いつまでぶーたれてるつもりだ?」

「……いつまでもー」

「俺様が作った可愛い顔が台なしだろうが。笑え」

「むりー。かわいくねーしー」


 ふて腐れて下を向いている灰司の顔をぐいっと自身の顔に近付ける柏原。


「俺様が可愛いっつったら可愛いんだよ。黙って笑ってろ」


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