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「ちょ、ちょっとボーズ? 心は女の子でも、私は男なのよ? 嫁げないわよ」

「え?」

「え……って?」


 本気で『分からない』という表情をしているボーズ。まさかまさか、これは本気で私と結婚できると思い込んでるパターンのやつかしら? ボーズってよくあるのよね。なぜそれが『おかしい』のか分かっていないこと。


「結婚できないの?」

「できないわよ。男同士よ? 私達」

「俺の母さんは、エミリーにお嫁にきて欲しいって言ってるけど?」

「えっ? ほんと?」

「うん」

「やだ、おばさまったら。そんなことボーズに言ったりして」


 それって、私のこと気に入って下さってるってことよね。赤ちゃんからのお付き合いだもん。嫌われてたら私泣いちゃうわ。


「ほんとに結婚できない?」

「方法は無くもないはずだけど……」

「なんだ。びっくりした。また母さんと姉さんに騙されたのかと思った」


 ボーズは何でも信じるからか、おかしな知識をわざと教えられることもある。例えば最近で言うと、ずっとボーズにしてるとそれ以上伸びなくなる。という嘘というか、年相応にオシャレな髪型をして欲しいという姉の願いを込められた言葉をまるっきり信じてしまったの。
 ボーズったら、それに焦るでもなく平然と『じゃあバリカンはまだその域に達してない人のためにあったんだ』なんて言って感心してたの。そこなの? 考えるのはバリカンの必要性についてなの? って笑っちゃったわ。


「エミリーと結婚できるならどんな方法でもいい。高校卒業したら、結婚しよう。一緒に住もう?」


 これまた平然とした顔でプロポーズまでされちゃった。私達、今さっきお互いの気持ちを確かめ合ったばかりよね?
 でもそういう、『おかしな』ボーズが私はずっと大好きで。そんなボーズが私はいつだって可愛くて、愛おしくて、こう言ってしまうの。


「そうね。ボーズが言うなら、きっとそれがいいわ」


 そして、ボーズはこう言うの。


「よかった」


 こんな風にいつまでも、何十年も一緒にいられたらいいわね。……ううん。生まれた時からずっと、当たり前みたいに一緒にいたんだもの。どんな形になったって、私達は。


「ボーズ。私達、ずーっと一緒よね?」

「うん。別々になる訳ない」


 決まり事のように言い切ったその言葉は、ついこの間にも言ってくれた言葉と同じだった。だからこそ、私は、その未来を固く信じられる。
 そんな風に、思えたの。


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