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 凉太の隣に座るために早く下校するようになってしばらく。学校帰りに遊びに行ってそのまま遊び尽くして朝帰りすることも、不良高校の制服のせいで絡まれてケンカをすることも、端正な顔に釣られた女を食うこともせず、毎日夕方に帰宅するようになった大輔は、特に家ですることもないからと勉強するようにまでなっていた。凉太と自身の間にある大きな差を意識したからという理由ももちろんある。

 夜にしっかりと睡眠を摂るので、当然朝には目が覚める。すると下校が楽しみなためいそいそと学校へ行く。いいリズムができたのか、すっかり平凡で真面目な生活を送っていた。


「だいちゃーん。どしたのー? 最近ちゃんと授業なんか受けちゃってマジメクンじゃーん」

「うるせーよ」

「せんせーも褒めてたよーん? こないだのテスト良かったんだってー?」

「まーな」

「つーかそのせいで俺が怒られちったからー。マージとばっちりー」

「お前の顔見て思い出したわ。柏原に聞きてえことあんだ。職員室いるよな?」

「この時間ならいると思うよーん」


 何かと話しかけてくる灰司の横をすり抜けて、職員室に向かう。柏原に聞きたいことというのは進学についてだ。高校はなんとなく流れで吉原に入ったが、大学はそれなりのところに行きたいと思うようになった。
 そうすれば、凉太に少しは近付けるのではと思ったためだ。幸い、大輔の家は裕福な方であるし、このままダラダラと過ごして卒業し就職するよりも、勉強をして進学する方が両親は喜ぶであろうとも考えた。
 ……のだが。あまり幸先は良くないようだ。なんと吉原で使われている教科書のレベルは相当に低いらしい。それなりの大学に進みたいのであれば、塾に通ったり、学校とは別に参考書なりで自学する必要があるというのが、柏原の答えだった。

 大輔の気は少し重くなったが、またいつもの車両に乗って凉太の顔を見れば、塾だろうが自学であろうが何でもやってやるという気持ちになるのでは……などという自分の考えに少し笑えた。


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