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 私がオカマなのを隠さないようになったのは、ここ1年くらいのこと。だからこうしてからかわれるようになったのも、ここ1年くらいね。その度に私は殴る蹴るで報復するものだから、中学では無くなっていたんだけれど。高校でもしばらくすれば収まるかしら?

 私の心が女の子であることを幼い頃にすんなりと受け入れてくれたボーズは、本当にどこまでも綺麗な人だと思う。
 外見的なことももちろんだけど、心まで本当に澄み切っているようで、側にいるとまるで透明で温かい水の中にいるような心地になるの。あまりに私とは違いすぎて、苦しくなることもしょっちゅう。
 少しボーッとしたところがあるから、何も考えていないように思われがちだけれど、ボーズは誰よりも他人を思いやることができる人なの。ただそれを伝える言葉を持たないだけ。見ていれば分かるわ。ボーズは話している人間の目をしっかり見て、しっかり聞いて、ずっと覚えていてくれる。他人の考えを否定しないで、受け入れてくれる優しい人。

 優しいからこそ、自己主張をあまりしない彼はしばしば下に見られてしまう。そして、私みたいな人間と一緒にいるせいで、彼まで巻き添いでからかわれることもある。そう、今みたいにね。今日は教室だけじゃなく、下校する時にまで野次を飛ばされてほんと嫌になっちゃう。何て日かしら。

 何を言われても手を出されない限りはこちらも手を出さないと入学前に決めた私達は、気にしないようにしながら正門へ歩き続けてたのだけれど。


「お前らってやっぱそーゆー関係なのかよー?」

「オカマちゃんの尻の具合はどーだよ?」

「女より締まるって言うよなー!」

「いくらヨくてもオカマはねーわ」

「俺はちょっと興味あるわ。オカマちゃーん、今度は俺とどう?」


 そんな声が聞こえてきて、ボーズは足を止めた。普段は表情の読みにくいボーズの顔に明らかな怒りの色が見える。まずい。反射的に私は口を開いたわ。


「ボーズ。ごめんなさい、私のせいで嫌な思いさせてるわよね。でも、待って。手を出しちゃダメよ」

「謝んなよ。エミリーが悪いんじゃねーだろ」


 ……怒ってる。完全に。


「あいつら二度と口聞けねぇようにしてくっから、ここでちょっと待ってろ」


 何が彼のスイッチを押したのか分からないけれど、ずっと一緒にいる私でさえも見るのが久しぶりなくらいのブチ切れモードになっちゃってる。こうなると私にはもう止められない。
 彼の気が晴れるまで殴られる奴らに、心の中で手を合わせた。


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