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 翌日から、大輔と凉太は毎日同じ時間の同じ車両に乗り、隣の席に座った。特に話をするわけではなかった。


「こんにちは」

「おう」

「また明日」

「ああ」


 たったこれだけのやり取り。しかし大輔はこれだけでも良かった。相手は名門私立。それに比べて自身は馬鹿で有名な不良の掃き溜め。話など合うはずもない。ただ、隣にいるだけで安らぐのだ。横顔を眺めるだけで幸せに感じるのだ。

 大輔は、凉太が好きなのだと自覚していた。男が男に……それに不釣り合いも甚だしい。身分違いもいいところだ。
 『ヤれりゃなんでもいい』と本気で思っていた自分を殴り倒したい。何人もの女を性欲のためだけに抱いて、相手の気持ちも考えずにヤリ捨ててきた。頭の出来や性別や金云々の前に、こんな腐った人間が愛を語れるものか。

『大事なもんができてから後悔するようなことはねぇようにな』

 今さらになって柏原の言葉が突き刺さる。もっと早く出会えていれば……と非現実的なことまで考える。
 だからこれ以上は望まない。たった8分間。隣にいてくれるこの時間を大切にしたい。そう思っていた。


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