「どうも、ローズです。
ご注文頂いたお花を持って来ました」

幻聴だと思った

疲れているから凜ちゃんの声の幻聴が聞こえて来たんだと思った。

しかし当の凜ちゃんが目の前にいる事からこれは幻じゃないと気付いた


06


いつもは巻いて下ろしている髪が今日は耳下辺りに2つに結われていて
着物もパステルピンクの淡い色合い

普段とは真逆の雰囲気を漂わせている
何て言うか、ほら、ふわふわした雰囲気?妹系?
とっても可愛らしくて失神しそうだ


そんな姿を見たら目の保養になるはずなのに

…はずなのに

何となく見なかった事にしたかった

だって、凜ちゃんの側には、葬式用の花が、沢山


「よぅ、凜」
「あ…沖田さん」
「わざわざすいやせんね、こんな所まで」
「いえいえ。…誰かの式なんですか?」
「まぁそんな所でさァ」
「そうですか…急に呼ばれたのでこんな格好でごめんなさい」
「気に病む事はありやせん。ささ、後は連中に任せて中へ」
「え?あ、はい」


言われるがままに敷地を踏む凜ちゃん。

すると数分も経たない内に副長がものすごい勢いで怒鳴り込んできた


「総悟ォォォォォォ!」
「きゃっ」
「何でィ土方さん。客がいるのにはしたない」
「何なんだアレは!何で菊の花が部屋中に置いていかれてるんだよ!」
「安らかに眠ってもらおうと思って」
「お前を安らかに眠らせてやろうか」
「…あ、あの」
「あぁ?誰だコイツ」
「山崎の女でさァ」
「……は」
「凜です、」
「凜、コイツは土方コノヤローだ」
「…奇跡ってあるんだな」
「奇跡?」
「いや…何でもねぇよ」
「そんな事より凜、茶でも飲みやしょう」
「…お仕事中なのにいいんですか?」
「大丈夫だぜィ、土方抹殺記念、俺が副長に昇格した記念も兼ねてますんで」
「上等だコラ、抹殺してみろよ」
「ふふ。仲がいいんですね。土方さんも一緒にどうですか」

おいぃぃぃぃ
俺を差し置いて何か事が進んでますけど!

てかあの大量の菊の花はやっぱり隊長の仕業だったのか

しかも、え!?
領収書俺の名前で切ってあるんですけど!!

…………てゆーかさ
凜ちゃんと隊長。
並んでると絵になるのは気のせい?
沖田隊長外見だけはいいから。
うちの凜ちゃんは中身もいいけど。
そんな2人だから華があるよね

副長と凜ちゃんも中々いい感じの組み合わせ。
いつもは小悪魔的雰囲気を漂わせてるけど今日はふわふわした感じの凜ちゃん。
大和撫子な彼女と二枚目の彼
亭主関白な感じで様になってる。

それに比べて俺と凜ちゃん、は

……

おかしいな涙で前が見えないや


「あれ山崎いたんですかィ」
「………いましたよさっきから、ずっと」
「地味すぎて気付きやせんでした」


ニヤリと笑う。
嘘だろアンタ気付いてたんだろ

「…、退くん…」

凜ちゃんはぽっ、と顔を赤らめる。

きゅん死にしそうだ


「山崎」
「何です副長」
「あの女にいくら金積んだ」

あ、あれー
前にもこんな会話した様な

「…積んでませんよ。純愛です」
「1番恋愛に縁がなさそうなお前が純愛とか言うな、寒い」
「どういう意味ですか!?」
「そういう意味だ。」
「…」
「で、ここだけの話いくら渡したんだ。やっぱりあれくらいのレベルとなると高かったか?」
「どいつもこいつも…、凜ちゃんは金で動く子じゃありません!」
「じゃあお前のどこに心が動くんだよ、一文字で言ってみろ」
「なんで一文字限定なんですか」
「やっぱり 金 だからなんじゃねぇの」
「死ね!副長死ねェェ!」


次の瞬間副長に殴られていた。
凜ちゃんが心配そうな顔をしている。隊長は俺なんていない存在みたく見向きもしない。

俺こんなに不憫なキャラだったけ


「…、」
「どうかしやしたか」
「退くん…大丈夫ですかね」
「いつもの事だぜィ。あんな奴ら放っておけばいいんでさァ」
「でも、」
「ほら早く」

副長にどやされながら凜ちゃん達の方に視線を移すと隊長が凜ちゃんの腕を引っ張る姿が目に映る

そんな姿を黙って見過ごすなんてできなくて

「触るな!」

どやし続ける副長を振り切って2人の間に入り込み隊長の腕を振り払う。
凜ちゃんも副長も唖然としている。

──ただ1人、沖田隊長は事が上手くいったかの様にニヤニヤしていたけど。

「今日の山崎は怖いですねィ」
「…」
「ありゃ、さっきまでの威勢はどうしたんですかィ?俺の凜に触るなコノヤロー、土方マジ死ねよ地獄に堕ちろコノヤロー、ってもう1回言ってみろィ」
「今日はお前の部屋を菊だらけにしてやるよ、総悟」
「〜〜〜っ!失礼します!」


心境的に居たたまれなくなって、凜ちゃんを連れてその場から逃げる。

う、うわーー!
勢いで恥ずかしい事やっちゃった、もうお婿に行けないぃぃぃぃ



「退くん…?」


…でも、凜ちゃんの顔見てたらそんな事どうでもよくなったケド

だって心の中の黒いやつが暴れているからね


「凜ちゃん」
「はい」
「今日は仕事休み?」
「うん、休みだったんだけど私指定での配達があって…」
「そっか…多分隊長のせいだと思う。今度から屯所に来る時は連絡ちょうだい」
「うん、そうするね。…あ、頬っぺた腫れてるよ」

凜ちゃんの手のひらが熱を持った頬っぺたに触れる。
ひんやりとしていて気持ちいい

「…大丈夫?」
「どうってことないよ。それより凜ちゃん可愛い上に無防備だからそっちの方が心配だった。さっきはヒヤヒヤした」
「うん、ごめんね」
「…駄目だよ」
「へ?何が?」
「こうやって触っていいのは俺だから」
「退くん」

「他の男には触らせない」


頬に触れてた手首を掴み首筋に顔を埋めて息を吹きかける。

ちょっと悪戯。

凜ちゃんはこくこくと黙って頷く。
うん、分かればいいんだよ、分かればね

耳まで赤くしちゃってもっといじめたくなったけど…
今日はここで退こう

…あぁ、なんだか今日の俺、ちょっとS。
いつにも増して黒い

理由なら1つ検討つくけど。
それがまたカッコ悪いんだけど。

え?何?知りたい?


何かって、それは…
あれしかないよ、あれ


ずばり、嫉妬でしょう






(土方さん)
(何だ)
(この大量の花どうしてくれましょう)
(自分で頼んだくせによく言うな)
(いっそのこと全部山崎の部屋に持って行くってのはどうですかィ。アイツ最近いいとこ取りしすぎなんでィ)
(賛成、手伝うぜ)










前回の総悟の復讐劇。山崎の名前で花を大量に買う、配達は凜指名、その花を土方の部屋に置く、他の男に絡まれる凜を見せつけ山崎をヤキモキさせる。…一石二鳥。いや三鳥。
補足しなければ分からない文を書いてしまった自分が憎い(-"-)

20100706

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