もしかしたら俺、死んじゃうかもしれない


生気の感じられない声で言えば受話器越しで凜ちゃんが動揺したのが分かる。

心配性だなぁ
可愛いなぁ

俺の心境は死んじゃいそうなのか和んでいるのかもう分からない

ただ分かるのは今すぐ行きます、と凜ちゃんが言った瞬間心がとても喜んだ事


今だけはなんて現金な奴なんだ、と笑うのも許してやってもいい


04


いつしか二人で行ったあの花畑が二人だけの秘密の場所になっていた。
沢山花が咲いて綺麗なくせに人の気配が全くない。

だからと言って厭らしい事はしないので安心して欲しい、全年齢対象の山崎退を信用して欲しい


目の焦点が合わずぼーっとしていると草を踏む音が聞こえてきた。
その音は段々と近くなってきて…


「や、山、崎、さ…っ!」


凜ちゃんだ。
しかし会いたかった子が目の前にいて嬉しいはずなのに俺の体は力が入らないまま

「はぁ、はぁ…」

走って来たのか凜ちゃんは息を切らす

馬鹿だなぁ、ゆっくりでいいのに、でも俺死んじゃいそうって言ったんだっけ、そしたらかなり心配してたんだっけ、ああ、本当に可愛いんだから、凜ちゃん


「どうか、しました、?」
「仕事がつかれたんだ」
「ここの所忙しそうでしたもんね」
「ミントンもできないんだ」
「上司さんに怒られますよ」
「いいんだ、今もサボってきたから」
「死にそう、って仕事疲れの事だったんですね」
「それもそうだけど、…」
「?」
「…凜ちゃんに会えなくて、死にそうだった」


寝転ぶ俺の隣に座っている凜ちゃんの手を握る

小さくて、柔らかくて、温かくて

何とも言えない心地よさ


「山崎さん、」
「それやめて」
「え?」
「…山崎さん、って呼び方。退って呼んで」
「…退、………くん」
「ぷっ。何それ」
「いきなりは、その…、恥ずかしいんです」
「あと敬語もなしね」
「、」
「俺凜ちゃんが敬語なしだったら頑張れる気がする」
「がんばりま…、…がんばる!」


可愛いよ、本当。
初っぱなから間違えてるし。
退くん…、退くん…、なんて魔法の呪文みたいに唱えてるし。

あー抱きしめたい衝動に駈られるね


「、…退くん?」
「何?どうかした?」
「眠たい?」
「…どうだろう。でも折角凜ちゃんがいるから眠るのは勿体ない気がする」


真顔で言ったのが効いたのか照れたように笑う。

笑った顔が1番好きだけど照れてる顔も1番好きかもしれない。


「あ」

何かを思い付いた様に身をこちらに近付ける


「退くん、頭、ここに乗せて」

ここ、と言われたのは凜ちゃんの太もも。

…え、えええええ!?

所謂、膝枕ってやつ!?

いつもは初でシャイなのにたまに見せる大胆な行動に驚かされる。
もうギャップの塊だ。

…そんな所が好きなんだけどね。


言われた通り頭を太ももに乗せる。

…あ。
柔らかい…

てかいい香りがする、…

なんかこうムラッと…

いやいやいやいやここまできたら邪念は捨てるんだ、山崎!



「どうですか」
「緊張するね」
「寝てもいいよ?」
「…逆に目が冴えちゃったよ」
「嘘つき。目、閉じてるじゃない」
「嘘なんかじゃないよ。だって凜ちゃん今顔真っ赤だ」
「!なんで分かるの?」
「凜ちゃんの事なら何でも知ってるよ」
「真選組一の監察だもんね」
「それ以前に凜ちゃんの彼氏だ」
「…!」
「また顔赤くなった」
「し、知らないっ」
「でもそういう所もすごく好………」



言い切る前に完全に眠りに落ちてしまった。

だっていい香りに柔らかい感触

眠らずにはいられない


眠りに落ちた瞬間、私も、なんて声が耳をくすぶった気もしたけど、それは聞き間違いかもしれないし、実際聞こえたのかもしれない

ただ、真選組の監察として、凜ちゃんの彼氏として、俺の持つ肩書きの全てで答えを出すならば、多分聞き間違いではないんだと思った


でもそんな事すらもやがて考えられなくなる


凜ちゃんの全てにひどく落ち着いて夢の中に入るのであった










ザキはつかれてるときちょっとSになるといい。ナユみたいに←

20100618

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